自信たっぷりにそう云う彼。
自分の耳と目が信じられない私。
取り敢えず帰れたら耳鼻科と精神科行こうかな…
私が戸惑いがちにそう云うと、
彼の表情が一気に曇る。
強引に手を引かれて連れて行かれた先には、
彼が云った通りのサーカスがあった。
少人数規模、と云うことだった筈だが、
そんな風には見えず、
絢爛豪華、という言葉が似合っている様だった。
其処にいろ、と云われたので去っていく彼を見送って、
其儘目の前に広がる絢爛豪華なサーカスの様子を
見ていると、不意に横から声が掛けられた。
ばちーん!!!!と大きな音が響いた。
何の音か理解するまでに数秒掛かった。
そして気付いた。
私が、人を、平手打ちした音だった。
私が殴ってしまった相手であろう、
柔らかい声のする方を見ると、
黒い蓬髪と首元や腕に包帯を巻いた、
長身の男性が、頬を摩りながら此方を見ていた。
流石に初対面の男性相手に
可成りの無礼を働いた自覚があるので、
物凄い勢いで謝った。
深々と頭を下げてお辞儀をすると、
頭上から笑い声が降ってきた。
彼の云った“選りに選って”というのはきっと、
このサーカスという場所が現在、この国…
日本で禁じられているというのを意味している。
サーカスが禁じられたのは五年程前で、
今ではサーカスがある、なんて話は全く聞かず、
又、サーカスの取り締まりで捕まった、という
事件も既に聞かなくなった。
サーカスが禁じられた理由としては
危険なパフォーマンスや動物の取り扱いに関する事、
という話だったが、実際、詳しいところは不明だ。
先程までの朗らかな顔ではなく、
あからさまに厭そうな顔に変わる。
面識はある様だけど、恐らく仲が悪いのだろうな、と
察せられる程に。
…若しかして若しかすると、
面倒ごとになる感じ、ですかね…
長い付き合いになりそうですね…













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。