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第25話

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2026/02/09 01:50 更新
――「正隊員認定式」

地下都市中央ホール。

天井の人工光が、今日はやけに明るく感じた。

整列した隊員たちの前に、司令官が立つ。


司令官「――本日をもって、
諸君らは“訓練生”ではなく、
天窮機関・正隊員として任命される」


その言葉に、胸の奥がぎゅっと締まる。

……一年

長かった。

短かった。

どちらでもあった。





司令官「朝日 桜夜」
朝日桜夜
はい
一歩前へ。


「貴官を、第二隊・正隊員として認定する」


証章が手渡される。

霧島ルイ
……やったな
山田
生き残ったな、俺たち
みなみは、何も言わずに微笑んだ。


式の終わり

司令官「諸君らは、“守る側”に立った。
その意味を、忘れるな」

拍手はない。

歓声もない。










「偉い人たちの一言」

ホールの前方、
司令官の後ろに数名の人物が並ぶ。


……あれが、“上”の人たちか

笹田は腕を組んだまま、一歩前に出る。
笹田時
……一年、よく生き残ったな
新人……いや、正隊員たちの背筋が伸びる。
笹田時
才能がある奴も
そうでない奴もいる。
笹田時
だがな、生き残ったって
事実だけは 全員同じだ
笹田時
それを誇れ。
……以上だ
短い。
でも、妙に胸に残った。


次に前へ出たのは、天霧隊長。

天霧玲奈
第一隊に配属された者は、
“重装・空中戦”という
最も事故率の高い任務に就く
天霧玲奈
怖いと思うのは正常だ。
だが、恐怖を理由に判断を鈍らせる者は、
次の任務には連れて行かない
天霧玲奈
生きたいなら、冷静でいなさい



つぎは、少し軽い雰囲気の男が前へ出る。
成瀬 颯人
第三隊隊長、成瀬颯人だ
成瀬 颯人
俺はな、
“正解”より“生還”を優先する
タイプだ
場の空気がわずかに緩む
成瀬 颯人
無茶するなとは言わない。
でも、死んだら終わりだ。
覚えとけ
成瀬 颯人
生きて帰ってこい。
それが、俺からの一言だ


さすが、隊長と言うだけで

年齢は自分たちと変わらない人でも

迫力が違う…


最後に出てきたのは天窮機関“総帥”(最上位)
全員が息を呑む。

ゆっくりと前に出たのは、

天窮機関総帥――

九条 恒一(くじょう こういち)。

白髪交じり、静かな目。
九条恒一
……今日この場に立っているということは、
諸君らは“守られる側”ではなくなったということだ
低く、重い声。

九条恒一
英雄になる必要はない。
ただ、任務を全うし、
次の世代へ“生きた世界”を渡せ
九条恒一
それが、天窮機関の存在理由だ
言い終わるのと同時に琴沢補佐が一歩前に出た

あれ?

普通今のが締めくくりじゃないのか?



ざわ、と空気が揺れる。
琴沢鈴音
……
剣も持たず、わたもいない。

ただ、まっすぐ立っている。
琴沢鈴音
覚えておけ
その声は、静かだった。

琴沢鈴音
ここでは、
いつ、誰が死ぬかわからない
会場が、完全に静まり返る。
琴沢鈴音
仲間かもしれない。
自分かもしれない
視線が、新隊員たち一人一人をなぞる。
琴沢鈴音
それでも
前に出る覚悟がある奴だけ、
剣を握れ 武器を取れ
一歩、踏み出す。

琴沢鈴音
守りたいものがあるなら、
その覚悟を捨てるな
琴沢鈴音
それがないなら、
今すぐここを出ていけ
誰も、動かない。
琴沢鈴音
以上
最初“偉い人たちの一言”とか言ってたけど

みんな、一言じゃなかったな、、


でも、言ってる通りだ


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笹田時
毎度毎度さぁ……
笹田は呆れたようにため息をつく。
笹田時
正隊員認定式のときだけ、
やたらカッコいいセリフ
言っちゃって笑
天霧玲奈
ほんとそれ。普段は
“はい”“別に”“好きにすれば”
しか言わないのに
成瀬 颯人
ギャップがすごいよな。
新人、絶対ビビっただろ
琴沢鈴音
……
琴沢鈴音
だって……
笹田時
だって?
琴沢鈴音
あそこぐらいしか
カッコいいこと言えないし
笹田時
素直かよ
白羊は苦笑しながら口を挟む。
白羊
あとですね、琴沢さん
琴沢鈴音
……なに
白羊
人見知り
どうにかした方がいいと思います
琴沢鈴音
白羊
そのせいで
“怖い”“近寄りがたい”
って思われてますよ
成瀬 颯人
実際、さっき新人が
“あの補佐、睨んでません?”
って言ってたぞ
琴沢鈴音
睨んでない……
笹田時
無表情で黙ってるからだろ
琴沢鈴音
どうにかしたいとは
思ってるんだよ
笹田時
思ってる“だけ”な
琴沢鈴音
うるさい!








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