花で囲まれたアーチをくぐると、目の前に広がるいつも通りの景色。
だけどそこには一つだけ、いつもと異なる現実が存在していた。
かけられた声に気付いてゆっくりと振り向く君。
水色のワンピースが風に揺れて、その美しさが僕の息を止めた。
信じられない、僕は夢を見てるのか?
今目の前に広がる光景は
僕の大切な花に囲まれた、僕の大切な人。
あなたがゆっくりと僕に近付いてくる。
その手には、いつ見ても美しいSmeraldoの花。
胸元が開いたワンピースから、あの印が少しだけ覗いている。
あまりの美しさに息を呑んでただ彼女を見つめていた。
すぐ近くまで来たあなたがそっと左手を僕の頬に添える。
その顔は涙で濡れていて、潤んだ瞳の奥には僕だけが映っていた。
初めて僕の本当の名前を呼ぶか細い声が、風の音にかき消されそうになる。
あなたの目から零れ落ちた涙が、胸元と手元を同時に濡らした。
君には今まで花びらしか見せることが出来なかった、僕の大切な花ーー
秘密を知ったあなたの姿はこの世で1番綺麗だ
透き通るような青色の花のその形は、
君の胸の印と同じだということ。
そうだ
僕の大切な花は、君自身なんだよ
さぁ今度こそ
僕の腕の中へーーー
一生君を、離さない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!