熱が下がった次の日の学校の休み時間。
俺はないこと一緒に、教室の隅っこに座ってた。
お外で遊ぶのは怖いから、ここで二人で静かにしてるのが、いつものこと。
俺が窓の外を指さすと、ないこはニコニコ笑って頷いた。
その時、後ろからガンッと大きな音がして、俺たちの机が揺れた。
クラスの男の子たちが、ニヤニヤしながら俺たちを囲んだ。
真ん中にいる子は、いつも声が大きくて、乱暴な子。
俺は怖くなって、ないこの肩をぎゅっと抱き寄せた。
俺は、精一杯の勇気を出して言った。
でも、その子はもっとニヤニヤして、ないこの筆箱を勝手にうばった。
ないこが、困った顔をして手を伸ばした。
でも、その子はわざと筆箱を高く上げて、ないこに届かないようにした。
周りの子たちも、一緒になって笑い出した。
ないこは顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうになってる。
激しく動いたらだめだから、無理にジャンプしたり、走ったりしたらあかん。
それを知ってる俺は、胸の奥が熱くなって、怒りでおかしくなりそうだった。
俺は立ち上がって、その子の腕を掴んだ。
でも、その子は俺を強く突き飛ばした。
俺は床に尻もちをついた。
痛いことよりも、ないこがバカにされたことが、悔しくて、悲しくてたまらない。
ないこは俺を助けようとして、俺の前に立ちはだかった。
ないこの声は震えてた。
ないこは、自分が大切にしてたものを諦めて、俺を守ろうとしてる。
いじわるをしてきた子たちは、「やったー!」と言って、筆箱を持ったまま走っていってしまった。
俺は泣きそうになりながら、ないこの服の裾を握った。
ないこは膝をついて、俺の頭を優しくなでてくれた。
ないこは、悲しそうに笑った。
自分の宝物を取られたのに、ないこは俺や母さんのことばかり考えてる。
どうして、みんなは優しくしてくれへんのやろ。
どうして、俺たちはいつも我慢せなあかんのやろ。
俺は、ないこの小さな手を握りしめた。
ないこの手は、さっきよりも冷たくなってる気がした。
おれ、もっと 強くならなあかん。ないこを、守れるように。
俺は心の中で、何度も何度も自分に言い聞かせた。
教室の向こうから聞こえる笑い声が、今の俺には、とても怖くて、遠い国の音みたいに聞こえた。
いじめっこは…消滅しましょう。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。