慎side
無意識に声に出してたのは自分の名前だった。
俺こんなキャラだっけ?
君は空ではなく今度は地面をみながら
初めて俺の名前を呼んだ。
希望に満ちてるんだか、
すごく寂しいんだか、分からない顔をして
君は目を合わせた。
君の居なくなったこの場所で俺は気づいたんだ。
こんなにも曇天の空をどうして眺めていたの?
春風だと思ってたのはいつしか梅雨の風になってた。
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「顔明るいじゃん」
「なんかあった?」
沢山聞かれた。
昨日、君と会ってから心が楽になってた。
本当に不思議な人だな。
今日また彼処に行ってみよう、そう思わせたのは東京の景色じゃない。
君に会えるから。
毎日あの場所に
君に会いに、君を探しに、柄じゃないって思いながら行ってたんだ。
探してるのに「偶然だよ」
そんな事言って涼しい顔で会いたかった。
名前も知らない“君”で胸がいっぱいだった。
“またね”
その言葉、信じていいですか?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!