EP.55
Dispatch
⸻
付き合って、もう八ヶ月が経っていた。
最初は。
コーヒーを買いに来る“芸能人のお客さん”だったのに。
今では。
週の半分以上を一緒に過ごしてる。
人ってこんなに変わるんだな、と時々思う。
⸻
旅行先に選んだのは、バリだった。
海外なら比較的自由に動ける。
事務所とも相談して。
最低限の対策もして。
やっと実現した、二人だけの旅行。
⸻
💬「……ほんとに来ちゃった」
🐶「うん」
ホテルのテラス。
夜風。
遠くに見える海。
ミンギュは隣で嬉しそうに笑っていた。
🐶「幸せ」
💬「顔が」
🐶「隠してない」
最近ほんとそう。
前よりずっと、“恋人”を隠さなくなった。
⸻
旅行中のミンギュは、完全に彼氏だった。
朝起きてもくっついてくるし。
歩けば自然に手を繋ぐ。
写真もいっぱい撮る。
🐶「あなた、こっち」
💬「また撮るの?」
🐶「かわいいから」
💬「そればっか」
でも。
ミンギュは本気でそう思ってる顔をする。
だから困る。
⸻
三日目の夜。
二人で海沿いを歩いていた時。
ミンギュが急に立ち止まった。
💬「……どうしたの」
すると。
ミンギュが少し真面目な顔をする。
🐶「なんかさ」
💬「うん」
🐶「最近、普通に未来考える」
静かな声。
波の音だけが聞こえる。
🐶「一年後とか」
🐶「もっと先とか」
心臓が少し跳ねる。
🐶「あなたが隣にいる前提で考えてる」
その言葉が。
嬉しいのに。
少し怖いくらい真っ直ぐで。
💬「……重い」
すると。
ミンギュが吹き出した。
🐶「またそれ」
💬「だってほんと重い」
🐶「でも好きでしょ」
💬「……」
否定できない。
すると。
ミンギュが嬉しそうに笑った。
そして。
自然にあなたの腰を引き寄せる。
🐶「帰ったらもっと忙しくなる」
💬「……うん」
🐶「だから今、いっぱい充電してる」
低い声。
近い距離。
そのまま。
ミンギュがそっとキスをした。
海風が静かに揺れる。
幸せだった。
本当に。
⸻
だから。
翌朝の通知を見た瞬間。
頭が真っ白になった。
💬「……え」
ベッドの上。
震える指でスマホを掴む。
画面。
【SEVENTEEN ミンギュ、バリで女性と旅行】
そして。
ぼやけた写真。
帽子を被ったミンギュ。
隣には、自分。
💬「……っ」
息が止まる。
その瞬間。
後ろから腕が伸びてきた。
🐶「……見た?」
寝起きの低い声。
でも。
ミンギュももう気づいてる。
💬「ミンギュオッパ……」
すると。
ミンギュは数秒スマホを見つめて。
小さく息を吐いた。
🐶「……早かったな」
意外だった。
もっと焦ると思ってた。
でも。
ミンギュは静かだった。
静かすぎて。
逆に怖いくらいに。
⸻
💬「どうするの……?」
小さく聞くと。
ミンギュはゆっくりあなたを見る。
そして。
そっと頬へ触れた。
🐶「まずは、あなた守る」
低い声。
真っ直ぐな目。
その瞬間。
胸がぎゅっと苦しくなる。
たぶん。
二人の恋は今、初めて“現実”に見つかってしまった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!