無我夢中で走った
もうあそこにいてはいけない
離れがたくなってしまうから
もう、残された時間はわずかだったから
せいいっぱい、笑顔をつくった
珍しく怒りに顔を歪める兄貴分を、冷静に見据えた
長尾を追ってきたらしい甲斐田と、弦月がその体を二人の間に滑り込ませるように立った
そう言いながらも事情を知るものはあなたの状態から理由はわかっているはずだ
隊舎まで怒鳴り込んできてしまったから、話が平行線でしか進まない
ややひきつったような笑みを浮かべながらも弦月はあなたに顔を向ける
けれど彼は気づく
首筋まで広がった透明な跡と彼女の瞳の奥にある執念に
らしくもなく、彼はあなたの胸倉を掴んでくる
それにあなたは乾いた笑みを返しながら言った
諦念の入り交じった声に、長尾はぐっと声を詰まらせた
そこに、足音もなく紫色の男がやって来た
そのあとに続く大きな男たちが並々ならぬ事態に眉を潜め、身構えた
その中にいるある人物を一瞥して、強引に長尾の手を振り払った
それだけ残して、白塚あなたは消息を絶った











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!