第16話

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2025/05/07 13:00 更新
無我夢中で走った

もうあそこにいてはいけない
離れがたくなってしまうから

もう、残された時間はわずかだったから
長尾景
おいあなた!
あなた
なに、そんな怖い顔して
せいいっぱい、笑顔をつくった
珍しく怒りに顔を歪める兄貴分を、冷静に見据えた
長尾景
どういうことだ、隊を抜けるって
長尾景
それに家も手離したらしいな
長尾景
何考えてる
あなた
......やだなぁ、気分転換だって
長尾景
気分転換で仕事辞めて家を離れる馬鹿がどこにいるんだ
甲斐田晴
おい長尾......!
長尾を追ってきたらしい甲斐田と、弦月がその体を二人の間に滑り込ませるように立った
甲斐田晴
あなたちゃんも、どうしたの急に
そう言いながらも事情を知るものはあなたの状態から理由はわかっているはずだ

隊舎まで怒鳴り込んできてしまったから、話が平行線でしか進まない
弦月藤士郎
考え直してみたら?
弦月藤士郎
まだ家も間に合うかもよ
ややひきつったような笑みを浮かべながらも弦月はあなたに顔を向ける
けれど彼は気づく
首筋まで広がった透明な跡と彼女の瞳の奥にある執念に
長尾景
おい、答えろ
らしくもなく、彼はあなたの胸倉を掴んでくる
それにあなたは乾いた笑みを返しながら言った
あなた
わからない?
あなた
もう疲れたんだよ
諦念の入り交じった声に、長尾はぐっと声を詰まらせた
そこに、足音もなく紫色の男がやって来た
渡会雲雀
ちょ、長尾さん!?
渡会雲雀
なにやってんすか!
そのあとに続く大きな男たちが並々ならぬ事態に眉を潜め、身構えた
その中にいるある人物を一瞥して、強引に長尾の手を振り払った
あなた
さようなら
それだけ残して、白塚あなたは消息を絶った

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