川上諒人がおずおずと口を開く。
ふくらから"リーダー"を返還された伊沢が、川上に視線を向けた。
川上は、先ほど乾から視線を向けられたときよりはリラックスしたような表情で話し出す。
伊沢の問いに、川上は何度か小さく首を振った。
伊沢が苦々しげに呟く。
その一言に、全員が表情を引き締めた。
伊沢は全員を見回し、心配そうに口を開く。
仲間を巻き込むまいとする伊沢の心中を察したふくらが、彼の言葉を遮る。
その表情は、覚悟に満ちていた。
普段は後方支援に動いているメンバーも、当然とばかりに力強く頷く。
伊沢はそれに応え、無言で頷き返した。
そこで一度言葉を切り、自らの思考を整理するための沈黙の時間を取る。
やがて、深呼吸をして口を開いた。
全員が再び力強く頷いた。
伊沢は彼らを頼もしげに見回し、明るく言った。
海の上にいることを忘れそうなほど、揺れが少なく快適な豪華客船だが、船艙では波とぶつかる音がわずかに船内に響いていた。
《重力操作》の異能力者の呟きに続いて、《体力吸収》の特殊能力者が問うた。
《無効化》の異能力者はフッ、と冷たく笑い、その人物を見据える。
そう呟く《体力吸収》の特殊能力者の目は、笑っていない。
同情という感情も、彼にはもちろん微塵も宿っていなかった。
そこにあるのはただ、冷たく、無機質な感情のみ。
《無効化》の異能力者の号令に一同は頷き、前を見据える。
今回のタイトル「 剣抜弩張」は、戦闘が始まる直前のような、緊迫した状況なたとえ、だそうです
私はこの「弩」の字が好きです笑
どこかで山本さんがこの字について触れていた気がするのですが……気のせいですかね











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。