家に帰って、ポストを確認してみる。
そこには、女らしいピンク色の封筒があった。
宛先は、椎名祐樹様。
祐樹、兄へか。
失礼かもしれないが、好奇心にかられて私は後ろを裏返してしまった。
…へぇ、かわいい名前。
祐樹は高校二年生で、17歳。
183とかいう、155の私から見たら巨人なのではないかと言うほどの高い背をしている。
おまけに短距離の選手で、ラグビー部のレギュラー。
顔もイケメンで、女子にはもちろん男子にもモテる。
私と同じ秀明の高等部に通っていて、成績はトップクラス。
東大理三を目指している。
小さい頃から骨に刻み込まれるようにして教えられた。
お兄ちゃんが勉強できないからテレビ消しなさい。お兄ちゃんの邪魔になるから家にお友達を呼んじゃいけません。お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが……
普通の兄妹らしい会話も、ない。
というか、きっと本当の私は、祐樹を兄だと思ってないんだと思う。
まぁ、あんなに特別扱いされちゃね。
それに祐樹もそれを当たり前だと思っている。
私を馬鹿にするなんて日常茶飯事。
言い返したいけど、言い返したら言い返したで、その時はスッキリするけどその後に母に怒られるから。
何度もあった。流石に学習するよ。
もういつか犯罪行為やってもあの二人絶対許すとも思えてきた。
私はため息をつきながら玄関のドアを開けた。
そこに祐樹が腰掛けていた。
うわっ最悪。
私をジロっと見上げながら靴を履く。
この人は今、何を思っているのだろう。
ふと、そんな思いが湧き上がってきた。
でも、人間の心なんてわからないから考え出したらキリがないと思って考えるのはやめた。
そもそも自分が考え出すと止まらない性格だしね。
私がそんなことを考えているときも、祐樹は無口。
何も言わない。
この頃勇気は前より一層喋らなくなった。
……あ、そっか、思春期か!!
大きな閃きをした自分を自画自賛しながら手紙を差し出す。
祐樹は黙ってそれを受け取り立ち上がる。
私は祐樹が通れるように壁にべったりとくっつく。
祐樹は肩をドアにぶつけるようにして出て行った。
うーん、めっちゃ不機嫌。これが思春期の力……
母が、シースルードアを開けて顔を出した。
頷くと、母は不機嫌そうな息をついた。
思春期なんだから、親も理解してあげようね。
私も将来なるんだから。
ただでさえあなたの遺伝子引き継いで怒りんぼだし、それにプラスして復讐は絶対する主義なんだから、多分私の反抗期ヤバいよ。
そう思っていると、ドアの向こうで妹の梨子の声がした。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!