
死柄木弔からの着信音。
先生からの紹介で知り合ったけど、多分きっと私と同じ"被害者"のひとり。4つも5つも年上だけど、弟っぽい性格。
私はそのとき、雄英体育祭競技場の薄暗い廊下を歩いていた。コツコツと静けさの中に靴音が響く。
ピッ
『もしも し…、!?』
突然、誰かに腕を引っ張られた。
『……爆豪くん、?』
彼は 喋んじゃねぇーぞクソが、と小声で吐き捨てた。
「……飯田も上鳴も、八百万も常闇も、麗日もあなたの名字さえ感じてなかった。」
轟くん、?
「最後の場面、あの場で俺だけが気圧された。本気のオールマイトを身近で経験した俺だけ…。」
「それ…つまり、どういう、?」
『!?え、 緑谷く、
「っ、おい喋んなっつたろ…!」
爆豪くんは手に力を入れてわたしの口元を抑える。
「緑谷…お前、オールマイトの隠し子かなんかか?」
え、…。いや爆豪くんもなんかポカンとしてるし、てか笑ってる?
「ち、違うよ!それは…って言ってももし本当に隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得してくれないと思うけど…!とにかくそんなんじゃなくて、!
そもそも逆に聞くけどなんで僕なんかにそんな、?」
「そんなんじゃなくてって言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな」
2人の間に沈黙が渦を巻く。
「俺の親父はエンデヴァー、知ってるだろ?万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら、俺は、尚更勝たなきゃいけねぇ…!」
"個性婚"
エンデヴァー…轟炎司の家庭は個性婚で創られたという。轟くんはヒーローを目指す理由、過去、憎しみを緑谷くんに話していた。親父の個性を使わず1番になることで奴を完全否定すると────────。
「…おい」
いつの間にか轟くんと緑谷くんは居なくなり、爆豪くんと2人きりになっていた。
『なに、?』
「お前電話してたんじゃねぇのかよ?」
『……あ、』
っ…!やばい死柄木弔と通話中、!
『ごめん爆豪くん、ちょっと電話する!』
と言い、その場を脱した。
はずだった。
✧──── 𝘀𝗶𝗱𝗲:爆豪勝己
俺がたまたま通りかかった廊下の先で、半分野郎とデクが話をしていた。そこにあなたの名字が来やがって、余計に状況がややこしくなる。
あいつらのクソみてぇな身の上話が終わって、あなたの名字が通話中だったことを思い出した。引き止めちまってろくに電話してねぇだろうから声をかけた。
そのとき、見た。
間違いねぇ、見間違えるわけがねぇんだよ。
"死柄木弔"の四文字を。
✧──── 𝘀𝗶𝗱𝗲:あなたの下の名前
ちょっと電話する、と爆豪くんに言いながら私は廊下を走っていた。
『ごめん弔くん。聞こえてた、?』
「いや?返事無かったけど、なんかあった?」
『ちょっと人に話しかけられてて、ごめんね』
轟くんたちの会話が聞こえてなくてよかった。知ったら多分、全力で利用してくる。
「あ、そーだ。体育祭観てるよ。すげー嫌な奴もいるけど、使えそうな駒もいる…また情報ちょうだい?ヒクイ」
『分かってるよ。情報欲しい人の名前まとめて送ってね?』
「分かった、じゃあ。」
『また。』
プツッ
…まだお昼食べてなかった。ランチラッシュにでも行こうかな、と明るい日が射す外へ向かって行ったとき。
「おい」
デジャブ、?
「ちょっと来い。」
『…爆豪くん、私まだお昼食べてなくて。』
「ああ?俺もだわクソが」
『、』
「お前に聞きてぇことあんだよ。行くぞ食堂。」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!