夕方のリビング。
七人のざわざわした空気が少し落ち着いてきたころ、玄関のチャイムが鳴った。
いつもより少し不機嫌そうな声。
丈一郎が玄関に向かい、小さな封筒を手に戻ってきた。
その言葉に、和也の眉がピクリと動き、恭平は不安そうに丈一郎の袖を掴んだ。
丈一郎は息を呑むように封筒を握りしめた。
空気が一瞬で張り詰めた。
大吾、謙杜、駿佑は状況が分かって黙って見守り、流星だけが「だぁ…」と袖を引っ張っていた。
丈一郎は震える指で封を切ると、声を震わせながら読み始めた。
――丈一郎、和也、恭平へ。
急にいなくなって、本当にごめん。
あの日、あの瞬間、自分たちの弱さから逃げることしかできなかった。
君たちに背負わせてはいけないものを、全部押し付けてしまった。
丈一郎。
まだ若いのに、家族を守るために必死で立ってくれてありがとう。
本当は支えるべき私たちが、いちばん守られていたのは私たちだったね。
君の優しさと強さに救われた日々を、忘れたことはありません。
和也。
心に大きな傷を残してしまってごめん。
怒って当然やし、憎んでもいい。
でもね、あなたが見せる優しい目を思い出すたび、私たちは後悔しかないの。
本当は誰よりも繊細で、誰よりも家族想いな子だということ、ちゃんと分かってるよ。
恭平。
何も分からないまま、大好きな家が急に変わってしまってごめんな。
あなたの笑顔に、何度も救われた。
その笑顔が消えてしまわないようにと願うしか、今の私たちにはできない。
こんな親で、本当にごめん。
どうか、どうか三人が幸せでありますように。
願いだけでも、届けさせてほしい。
――母より
――父より
読み終えると、丈一郎は小さく息を吸った。
何かをこらえるように、手紙を握りしめる。
強い言葉の裏で、声はかすかに震えていた。
恭平は泣きながら丈一郎の腕にしがみついた。
その横で、大吾がそっと声をかけた。
丈一郎は弱い笑みを浮かべた。
謙杜は、不器用に涙をぬぐいながら言った。
駿佑は流星をそっと抱きしめながら、兄たちの顔を見渡した。
その声に、壊れそうだった空気がふっと緩んだ。
丈一郎は涙をこぼしながら笑った。
和也がぼそりと呟いた。
その言葉に、丈一郎は静かに頷いた。
夕日が差し込むリビングで、七つの影が重なっていく。
“家族がバラバラになった日”
その傷はまだ癒えていない。
でも――
“新しい家族になった日”
その温かさが、確かにそこにあった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。