第117話

___
663
2026/04/28 15:00 更新
side祥生


自分の部屋で、ひたすらにコンピューターの画面と睨めっこする

まだどの部屋からも音が聞こえるから、みんな寝とらんのやろうなぁ

奨くんは、店自体はブラッククローバーとは関係ないって言っとった

でも、油断はできんから

………みんな、ブラッククローバーには一際強い恨み持っとるからな

俺も、例外やない

今からちょうど10年前、俺は家族をブラッククローバーに殺された

「ただいまー」っていつも通り言ったんに

返事が来ることは、なかった
大平祥生
大平祥生
ッ、はぁ………
別に、家族を亡くしたのは俺だけやない

景瑚くんも、奨くんも、翔也も、碧海も、蓮くんも

みんな家族を亡くした

他の幹部の中には、家族じゃなくても恋人を亡くした奴もおる

純喜くんと豆はそうやな

……ああ、拓実くんもか
大平祥生
大平祥生
……、あれ?
そういえば、るっくんと汐恩ってなんで殺し屋やっとんのやろ

こっちの世界に来てから自分の身を守ることに必死で

あの2人の話を聞いたことがなかった

記憶を遡るも、話を聞いた記憶は………見つからない

代わりに出てきた記憶は


血まみれの家族やった

大平祥生
大平祥生
っ、なんやねん…くそ……ッ………
こういう時、自分の能力が大嫌いになる

なんでも覚えておけるこの脳みそは、時と場合によっては最悪な記憶をする

俺の中からあの日の記憶が消えることは決してない

………俺が、死なない限りは
side一成

豆原一成
豆原一成
っ、ふぅ………
誰もいない訓練場

人気がなくて寒さすら感じるそこで、俺は1人筋トレをしていた

今のまま寝たら、絶対変な夢を見る気がしたから


『すっご!一成ってめちゃくちゃ筋肉綺麗だよね〜』

『一成は私が守ってあげる笑』

『一成……_______愛してるよ』


………消えろ

もう、お願いだから……俺の中からいなくなってよ




俺がこっちの世界に来たのは、3年前

他の幹部に比べたら、まだまだ新米だった

ルールも何もわからなかった俺に、全部を教えてくれたのは奨くんで

そんな奨くんに、一生着いていくって決めた

だから………

もう、あなたは必要ない
豆原一成
豆原一成
………____
俺の声で、空気が振動する

久しぶりに口にした恋人の名前は、情けないほど震えていた


あの人は、笑顔が綺麗な人だった

何があっても、たとえ歪んでいたとしても……笑顔を絶やさなかった

………刺された時でさえ

もみじが紅葉をする季節、一緒に出掛けていた俺たちはブラッククローバーの下っ端に襲われたんだ

なんとか守りたくて、それでも恐怖で思うように動けなくて

俺が怪我をする前に、彼女は刺されたんだ

人通りも少なくて、助けは呼べない

でも、涙をボロボロ流す俺の前で、彼女は言ったんだ


『私のことは忘れて、幸せになってね。復讐とかしたら、だめだよ?笑』


あなたとの約束は、守れそうにない

もしも俺が死んだら会いにいく………とは、言わないけど

頑張るからさ、母親気分で見ててよね

いつまでも後ろを向いてるわけにはいかないから

俺には、大事な存在があるんだ

プリ小説オーディオドラマ