おれが声をかけてもいるまは意識を失ってしまい、返答を求めても雨の落ちる音が響くだけ。おれに凭れかかったまま、気を失ってしまったいるまの体は酷く冷えていた。当然だ、こんな土砂降りの中雨に打たれていたんだから。
おれはぎゅ、といるまの体を抱き締めるとそのまま家の中へいるまを連れて行った。本当なら今すぐにでもお風呂に入れて温めてあげたいけど、いるまの背中から出ている…恐らく、触手?にどう触れていいか分からない為、なるべく触れないようにいるまの服を着替えさせて、暖房と毛布でいるまの体を温めた。
いるまが目を覚ますまで、おれはジッといるまを見つめていた。…いるま。いるまだ。間違いなくいるま本人だ。いるまが、帰ってきた。いるまは、生きてた。
気絶してしまったいるまの頬を撫でる。そのままそっといるまの胸元に手を当てる。…動いてる。うん、いるまは生きてる。
自然と口から零れ落ちていた。
涙が止まらなかった。生きてたんだ、いるまはちゃんと生きてた。良かった、本当に…。
いるまの声がしてハッと顔を上げる。
捲し立てるように言葉を紡ぐおれを片手で制して、いるまは起き上がる。
いるまはそう言って背中から生えている触手を指差す。
え、と思っているといるまの背中にしゅるしゅるの仕舞われていく触手。驚きで声が出せずにいると、いるまがぽつりぽつりと語りだした。
いるまの声は、体は、震えていた。おれには分からないけど、きっと想像を絶する痛みなんだろう。
一旦そこで言葉を区切ると、いるまはおれと目を合わせた。
確認するように呟くと、いるまは頷いた。
おれの目を見つめるいるまは、悲しげな表情をしていた。いるまの言葉なら何の根拠がなくても信じるのに。
弱々しく呟くいるまの目から涙が溢れていた。おれはそんないるまを見ていられず、いるまを抱き締めた。
自信なさげにいるまの手がおれの背中に回ってきた。二人で日が昇るまで泣き続けた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!