前の話
一覧へ
・ホラーや微小なグロ的な表現が含まれている可能性があります。
・小説には如何なる不良的な誘導も含まれていません。
・実際の地名・人名等は現実と一才関係がありません。
・いくつか誤字が含まれる場合があります。
こう思ったことはあるだろうか?
この世界の全ての人間が、本当に人間である保証はあるのだろうか?
…もちろん、何を言っているのか、分からないのだろう。
が、今の状況では本当に一人ひとりが人間かどうか判断することが出来ない状況下にあるのだ。
“人ではないナニカ”…通称_偽人。
それらが出現したのだ。
今までの歴史上の記録を見ても存在しなかった生物。出現したタイミングも、原因も未知なのだ。
それらには何故かIQ150と、人類の平均知能を超えた知能を有し、人間を食料として生息する。
…そして殺した人間の皮膚組織を被り、人間を模倣する。そのプロセスが繰り返されれば繰り返されるほど、偽人はより人間へと近づく。
…そして完全体へと進化する。
目的も不明であり、判別のしようもほとんどないと言ってもいい。
唯一判別できる方法というならば、血液の色が黒色か赤色であるかだけなのだ。
…遺伝子を研究してみても、従来の生命体からは逸脱したような構造をしており、別生物から進化した可能性は最早0と言ってもいいだろう。
目の前に座っている男はそう言うと、自らのメガネをクイっと手で上げる。
彼は白澤博太。世界トップクラスとも言えるバイオ研究所“ Rebirth“に元々所属していた研究員であり、遺伝子技術において多大な成果を出した人物でもあった。
彼はその功績を元に、政府からの正式な推薦でこの日本国立異常現象対策本部所属の“異常実体極秘研究所”に来たわけだが…。
彼は新入りであるのにも関わらず、次々と異常存在に関する重要な発見を繰り返し、いつしか研究主任にまで成り上がっていた。
それはわずか1〜2年程度の事であり、普通であったらありえない昇進速度だ。しかし、すぐに苛々するような性格であるため、あまり他の研究員や博士からは好まれていない。もちろん、それは自分もだった。
俺はそう言うと、卓上に置かれていたコーヒーを一口飲む。口の中に苦いコーヒーの味が広がっていく。
そう言うと、白澤も同じくコーヒーを飲む。
偽人は皮膚自体が異常に頑丈であり、耐酸・耐火・耐爆と言った異常なほどまでの硬さを誇っている。それだけではなく、再生能力も非常に強いのだ。どれだけ相手の体に銃弾で穴を開けようと必ず再生するし、かえって爆発物で跡形もなく消そうとしてもダメージは皆無…。
核爆発時のエネルギーを用いてもそれは変わらず、偽人を無力化させる程度しか出来ない。と言うよりかそんな確かに消滅させることが出来ないようなもので偽人を無力化させようとして世界を滅ぼすような馬鹿なことをしても結局意味がない。
そう言ったことが原因であり、現時点で最も解決すべき課題点でもあるのだ。
なんせ判別方法が分かっても処理ができなかったら結局意味がないのだ。
HZ2000とは、反物質を現代の最先端科学を集結させたような巨大な機械よりも多く、効率よく生成することができる機械だ。
少ない電力で大量生成を行うことが出来るので、最早封印するべきじゃないか?とまで思ってしまう。
一瞬だけ白澤が何やら顔を顰(しか)めていた。何か不満なのだろうか?
そう言うと、白澤は椅子から立ち上がり、退室をしたのだった。
部屋には俺1人だけが取り残され、少し苦いコーヒーの匂いが漂い続けるだけだったのだ。
俺はそう呟くと、机の上に置いてあったリモコンでテレビのチャンネルを切り替える。
ピッと言う音とともにテレビの画面が切り替わり、クッキング系の番組が映し出される。
全く、朝からあまり不穏なニュースはあまり見たくないというものだ。
俺は高野晴人。ここら一帯ではおそらく頂点に位置する超進学校の『白野高等学校』。この高校は学費は非常に高い。しかし授業はスピードと質の二つが兼ね備えられており、勉強好きな努力家からしたら非常に恵まれている環境があると言えるだろう。
…もちろん、あまり勉強には追いつけず、クラスでは所詮中間程度の学力しかない。
もともと俺の両親は俺と俺の妹が生まれて数年後に離婚し、俺の母親は他の男と結婚するために俺の父親に俺たち兄妹を全て押し付けた。
それからというもの、俺と父親と妹の3人で暮らすようになった。
俺の父親は研究職であり、国の最高研究機関で研究主任をしている。父親は仕事が忙しすぎて手が回らないため、いつも父親を見ることはない。
そのため普段は妹と俺で過ごしている。
…と、突然後ろから声をかけられる。いつも聴き慣れているあの声だ。
俺は後ろを振り返る。
そこには、真珠のように真っ白な髪を腰までストレートの伸ばした、可愛らしく綺麗に整った顔立ちの少女が俺に向かって手を振っていた。
両目は真紅であり、まるで血液の色のようだった。
肌が白っぽいのもあり、アニメのキャラか吸血鬼かなんかと思ってしまいそうな見た目ではある。
…彼女こそ俺の妹、高野莉奈だった。
俺と同じ高校に通っていて、友達も多く学力はTOP5圏内。正しく“カースト上位”であった。
そんな彼女が俺の妹だからこそ俺が何故か嫉妬に満ちた目で周囲から睨まれる。…俺は何も悪くないのだが。
俺はそう軽く返事をすると、着替えをちょうど終わらせて、黒色の皮の鞄を肩に背負う。
…と、俺はそこで言葉を止めた。
妹の目がおかしかったのだ。まるで獲物を見定める猛禽類のような、獲物を今すぐにでも食い殺したいかのような欲望が満ちたような目で俺を見ているのだ。…もちろん、あからさまに混じっているわけではないのだが、そんな気がしたのだ。
俺は好きし不思議勝手目の前で手を振ってみる。
莉奈は何かに気づいたようにハッとすると、すぐにさっきのような嫌な目線が消え去る。
あのような圧迫感のある目線が消えてくれたので、少し気が楽になった。
そういえばもう数ヶ月、いや1年以上も一緒に登校をしていなかったなと思い出した。…まあ、久しぶりなのだし今回くらいは良いだろう。
莉奈のそんな明るい声に、俺のさっきまでの疑念の心は完全に消え去ったのだった。
そんなわけで莉奈も制服を着終わると、俺と莉奈は一緒に玄関まで行き、靴を履き替えて外に出る。
俺たちは新築1年のマンションに住んでいて、設備などもほぼほぼ最新と言ってもいい位に新しい。
渡り廊下のには常に清掃員が掃除をしており、毎回この時間帯には清掃員のおばさんがここで水拭きをしているはずだ。
いつも挨拶をしているので、顔見知り程度の関係となっていた。
…が、今回は清掃員が見当たらなかった。
まあ、あのおばさんがいつもここを清掃しているわけではないし、きっと今日は休んでいるのか別階層を担当しているのだろう。俺はそう思って妹の方を振り返る。
と、俺はあまり信じられないような光景を目にした。
…靴を履いている莉奈の背中に、一本の触手が生えていたのだ。
それは赤茶色のサビのような色をしており、まるで生きているかのようにうねっていた。おそらく粘液らしきものもついているのか、透明の液体のりのような液体が滴っていた。
俺はあまりの驚きに声が出ず、とりあえず目を擦る。…さっきのが幻覚であることを心の底で願いながら。
そうしてもう一度目を開けてみると、そこには至って正常な莉奈がこちらに歩み寄っていた。
先ほど背中にあったあの触手も、まるで最初っからなかったかのように消えていた。…跡形もなく。
あれはおそらく自分の幻覚だったのだろう…。そうだ、おそらく過度な疲労による幻覚であるのだろう。
…どこか言い分をつけているように自分に自己暗示を行う。
そんな莉奈の声が俺を現実へと引き戻した。
後半になると声が小さくなっていった。
…というよりか、莉奈は明らかに何かがおかしい。いつもと違うのだ。もちろんそんな小さな違和感など、普段なら勘違いだろうと絶対に気にも留めない。だけど…予感がするのだ。
…が、自分は圧倒的に科学を信仰するタイプなので、やっぱり何かの思い違いだろうと俺は頭の中の雑念を振り払うのだった。
そんな感じで、俺と莉奈はピカピカの渡り廊下を歩いていくのだった。
…異変はすぐに起きた。
カリカリ…カリカリ…。
俺と莉奈がエレベーターに乗っている時だったのだ。頭上から金属を金属で引っ掻くような、耳に悪い音が上から響いてきたのだ。
俺は上を見上げるが、頭上には天井があるだけ。何も違和感がないのだ。
莉奈はさっきから何も喋らない。…それどころか、目線が何かを狙っているような感じなのだ。
凍てつくような鋭い目線が俺の背中に突き刺さる。…これはそもそも一般人が出せるようなものじゃないだろう。最も、あの温厚だった莉奈が出せるはずもないのだ。
俺は試しに莉奈に話しかけてみる。早くあの凍てつくような視線から逃れたいから。
少しばかり声に慌てが出ていた。…やはり何かがおかしいのは明白なのだろう。
俺は脳の隅っこにそのことを記憶しつつ、ちょうど開いたエレベーターのドアから駆け出すように外に出たのだった。
あれから9時間後。
俺は部活で疲労し切った体を引き摺りながら徒歩で下校をしていた。
空は当たり前だがすでに暗くなっており、どんよりと曇っているからか月明かりはない。
街路灯の微弱な光のみが道路を照らしており、この住宅地区域に不気味な空気を醸し出していた。…正しく幽霊が出そうな状況下だ。
俺はそう思いながら、自然と足を早めた。
夜だからか辺りに人影は1人もおらず、俺1人だけだった。少なくとも今は午後19時だったのだが、家の中の電気がほぼほぼ付いていないのだ。それがより孤独感を感じさせた。
というよりか、晩飯の時間帯のはずなのでまだあかりはついてて当然なはずだが…。
と俺が思考していると、突然スマホに着信音がは鳴り響いたのだ。
俺はスマホを取り出すと、困惑した気持ちのままパスワードロックを解除する。
俺の妹はあのメッセージアプリを持っていない。俺の父親はあまり連絡を入れないしこんな遅い時間帯にメッセージを送ってくるはずがないのだ。
あとはグループしかないのだが、俺のクラス以外入れてないしこの時間帯にメッセージは絶対にないのだ。
俺がメッセージを開けると、見慣れないアカウントがフレンド申請を送っていたのだ。
真っ黒なアイコンに、日本国立異常現象対策本部とアカウント名が書かれていた。
なんだ?どこのイタズラなんだ?俺はそう思いながらメッセージを開いてみる。
『こちらは日本国立異常現象対策本部です。
我々の世界は現在、偽人による密かな侵略が進行しています。
偽人とは、人型に酷似した生物であり、IQ140と人間の平均以上の知能を持っています。皮膚は非常に強固であり、現在で存在する武器は全て通用しません。
偽人は人間を食糧として生息しており、人間世界に侵入し人間の皮膚を剥ぎ、人間を限りなく模倣します。
初期段階においてはまだ生物学的構造に反する構造が外見に見られますが、人間を模倣するに連れてそれらがなくなり、感情・習慣・口調などと言った特徴も完璧に模倣することが可能になります。
現時点における共通の判別方法は、血液の色です。黒色であれば偽人であり、赤色であれば本物の人間です。
もし周囲に偽人に遭遇した場合は、以下のことを厳守してください。
・彼らの正体を絶対に見破らないように配慮してください。
もし彼らの正体がバレたと彼らが気づいた場合には、無理やりあなたを殺害する可能性があるため、変な刺激をしないよう慎重に対応してください。
・チャンスを見極め、逃げる・隠れるという行動をとってください。
先ほども記述した通り、彼らは銃火器および刃物などと言った武器は無効化されます。そのため戦うことは推奨されません。機会を見て、速やかに逃走して距離を稼ぐか、隠れてください。
・銃を所持してください。
もしあなたが絶体絶命の状況に陥り、偽人に殺害されそうになった場合は、自決も考慮してください。刃物でも構いません。』
なんだ?このメッセージ。暇なのだろうか?
俺がこのメッセージを見て最初に思ったのは、そんなことだった。
だって考えてみて欲しい。こんな偽人という名の怪物が突然現れるなんてそんなのありえない。それは言える。
もちろん進化の途中で枝分かれして誕生した可能性だってあるが、そのプロセスがたった数時間程度で発生するはずがない。もし数百・数千年という時を経て進化したのであれば自然なのだが、必ず歴史などに記録が残るはずなのだ。
…全く、根拠もない出鱈目(でたらめ)な嘘を勝手に発信するのはやめて欲しいものだ。
俺は呆れながらそのアカウントのフレンド申請を削除して、ブロックしようと操作していたが…。
突然一つの視線が突き刺さる。
それは莉奈のあの鋭い視線と同じ…いや、あれ以上の鋭い視線だ。
俺は恐る恐る後ろをゆっくりと振り返る。
…そこには何もいなかった。
…いや違う、誰かがいる!
視界にある範囲で最も遠い電柱の後ろに、歪(いびつ)な人影を見つけたのだ。
遠くからだと真っ黒で、よく目を凝らさないと見えなかっただろう。
その人影はよくみると、背中に無数の腕が生えていた。それらはまるでミミズの如くうねっていた。
その人影は俺が気付いたと察知したのか、突然電柱の影から出てきた。
俺はその一目で、恐怖のあまり地面に座り込んでしまった。
それは顔辺りに無数の目を持っており、俺をジロジロと見つめていた。それだけでなく下半身と上半身の間がありえないほど曲がっており、非常に不気味だった。
全身が真っ黒であり、それは暗闇に溶け込む際に非常に役に立つことがわかった。
それは俺を一瞬にして捉えると、俺が反応するよりも早く俺に飛び掛かるように迫ってきた。
俺は恐怖のあまり叫んだ。
逃げろ!逃げろ!逃げろ…晴人!
俺は心の中で自分に必死に鼓舞するが、足がまるで石になったかのように動かなかった。
ダメだ!そうこうしているうちにも相手は迫って来ているのだ。…もしかして、これが偽人という奴だろうか?
しかしそんなことを考えている暇など、ない。
それは俺の目の前までまるで瞬間移動したかのように移動すると、俺を掴み上げようと手を伸ばしてくる。
俺の叫び声と同時に。
どおおおおおおおおおおおおおおおおん!
まるで爆弾がゼロ距離で炸裂するかのような、鈍い轟音が辺りに響いた。それはまるで鼓膜を破るかのような感じで俺の耳に入り込み、頭が痛くなる。
頭をなんとか抑え込むと、目をゆっくりと開ける。
…すると、そこには驚くほど意外な人物が俺の目の前に立っていたのだ。
To Be Continue…











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!