第66話

紅 一 点 の 過 去
1,646
2024/02/24 16:00

雪村side













2010年10月 。



私がジャニーズ事務所に入所してから4年が経った 。



私が入所4年目ということは、母の死を指しているのと何ら変わりはなかった 。















母の様態は年々悪化し、去年には医師からいつ息を引き取ってもおかしくない、と言われてしまった 。



するとある日、事務所の社長室に呼ばれ、ジャニーさんの口から1番聞きたくなかったことが告げられた 。

















社長室のドアをノックし、入室する 。









『 失礼します……… 』


ジャニーさん 「あ、You………本当は僕もこんなこと言いたくないんだけど………」


『 …………なんですか…?? 』









この時も、すでに悪い予感は感じていた 。










ジャニーさん 「Youのお母さん…………たった今お亡くなりになられたと病院から連絡があった………」


『 ……… 』











私はしばらくその事実を受け入れることが出来なかった 。












私は母はもう長く生きれないと分かった時から母の死に対してある程度覚悟はしていた 。



けれど、母の死のショックは予想より遥かに大きくて 。










突然何も考えられなくなって、頭が真っ白になって 。










母との思い出が次々と脳裏に浮かんできて 。










母にもう会えないと思うと………………辛くて、苦しくて 。





















ジャニーさん 「You………今は泣くの我慢しなくていいんだよ??今は泣いていいんだよ??」


『 …………っ、… 』







私はジャニーさんのその言葉を聞いた途端、その場に泣き崩れた 。



すると、ジャニーさんは両手で私を優しく包むように抱きしめ、あの時と同じように ──





大丈夫、何があっても僕がそばにいるからね、と言ってくれた 。



この時のジャニーさんの優しい声は今でもはっきりと覚えている 。


















そして後日、ジャニーさんから、母が私が死んだらあなたに渡してほしい、と頼まれていたという手紙を受け取った 。



その中身には ──






































あなたへ





今まで、何もしてあげられなくてごめんね 。


こんな無力な母親ですが許してください 。


残りの長い人生、お母さんの分まで楽しんでね 。


生まれてきてくれてありがとう 。大好きだよ 。
























と書いてあった 。





















この手紙を見た私は涙が止まらなくなった 。

























………お母さん……



全然そんなことないよ……??



今まで、いろんなこと私にしてくれたよ……??






ジャニーズに入らせてくれたのも、私に小さいうちからたくさんのことを経験させるためにお金がたくさんかかるのに、いろんな習い事をさせてくれたのも全部お母さんのおかげなんだよ……??






全然無力なんかじゃないよ……??







ありがとう、なんて…………私が言うべきだったのに…………














だから、私、お母さんの分まで悔いなく私らしく生きるから 。






だから、これからもずっと天国から見守っててね 。








私も大好きだよ 。

































そしてこの母の死は、私が医者を目指すきっかけとなり、後々大学の医学部に入ることにも繋がるのだった 。

プリ小説オーディオドラマ