その日から、バズーカは変わった。
街を荒らしても、
ヒーローを倒しても、
必ず――一人だけ避ける。
屋上の縁から、あなたは氷の広がる気配を感じ取った。
名前を呼びそうになって、唇を噛む。
自分に言い聞かせる。
あのヒーローに近づくほど、
自分は弱くなる。
だから――
あなたは、進路を変えた。
聞き覚えのある声が背後から響く。
でも、振り返らない。
大砲を生成し、煙幕用の一発だけを撃つ。
轟の声が、少しだけ低くなる。
逃げてるんじゃない。
避けてるだけ。
白煙の中を駆けながら、あなたは胸を押さえた。
これ以上、見たら……絶対、止まれなくなる。
別の通りで、ヒーローたちが倒れていく。
あなたは冷静に処理し、
致命傷だけは避ける。
――余計なことを考えないために。
そう呟いて、大砲を構えた瞬間。
地面が凍った。
退路を塞がれ、あなたは舌打ちする。
轟が、正面に立っていた。
あなたは視線を逸らす。
即答だった。
あなたの喉が、きゅっと締まる。
砲身を下げる。
それだけで、轟の目が細くなった。
短く言い切る。
沈黙が落ちる。
轟は一歩、近づいた。
断定だった。
あなたの指先が、わずかに震える。
氷が、さらに足元を覆う。
逃げ場が消える。
思わず、声が漏れた。
轟が、一瞬だけ動きを止める。
あなたはその隙に、煙幕を放った。
白煙の向こうから、震えた声だけが残る。
それが、嘘じゃないことが、
一番つらかった。
煙が晴れたとき、あなたの姿はなかった。
轟は、氷の上で立ち尽くす。
でも、あの声は――
拒絶にしては、弱すぎた。
避けられている理由が、
憎しみだけじゃないことを、
彼は、まだ言葉にできずにいた。
…Next











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。