ロクタは笑顔で京の方に駆け寄ってきた。
ロクタが話していると、急に京がロクタに抱きついてきた。
ロクタの温かい胸の中で京は呟いた。
ロクタは自身の胸の中にいる京の頭を優しく撫でた。まるで、ずっと一人だったら迷い猫を救う様に。
京はロクタに全てを話した。
京自身、すごく怖かった。誰にも言ったことのない、それこそ紫音にも言ったことのない自分の第二のトラウマを実の弟に打ち明けたのだから。
これでロクタに……みのりに変な思いをさせてしまったらどうしよう。
そんな事を考えていた矢先、
京の額にロクタが軽く口付けた。
途端、急にロクタが京に謝った。
ロクタは小さい声で呟いた。
……やっぱり、みのりに気を使わせてしまったのだろうか。
今にも泣いてしまいそうな声色で呟いた。
みのり……ロクタは重く捉えすぎたのか、目尻に涙を溜め、京に抱きついた。
幸い、廊下にあまり人はいなかったので、京は思う存分ロクタを抱きしめ返した。
京のクラスの目の前の階段の影に隠れたイツキ。
窓ガラスから差し込んでいる光がワイヤーグラスに反射して鈍く光る。
こんな光景をまのあたりにしたイツキは少し微笑み、保健室へと足を戻した。
紫音がイツキを再び迎えた。
イツキは京に用事があり、保健室に行ったが、紫音から"京は今教室にいる"と聞いて、京の教室の目の前まで行った。
そして、ロクタと京のやり取りを耳にしたイツキは空気を壊さないようにと一旦帰ってきたのだ。
少し俯きながら、イツキは先程のやり取りを思い出し、微笑んだ。