『……、』
言葉が出なかった。
喉につっかえて、消えていった。
言いたいことが見つからなかった。
何か、言いたかったはずなのに。
何て言ったらいいのか分からなくて、唇を噛むことしかできない。
やるせなくて噛む力を少し強めた時、スマホが震えた。
LINE
>及川徹
つい通知を見て嬉しくなってしまった自分に、ため息が出る。
こんな状態ならいっそ、紗希ちゃんの言葉に乗っかってしまった方がいいんじゃないか。
そんな気すら、してしまう。
でも、結局私はできないから。
最後に選ぶのは、いつも同じで。
『……ごめん紗希ちゃん、紗希ちゃんを応援したいけど、その言葉には賛同できないかな』
ねぇ紗希ちゃん、私ね、一緒に居たい人がいるんだ。
向こうはそう思ってなくてもいいから、だから。
『もう少しだけ、私、今を楽しんでいたいの』
誰かと恋人同士になったら、きっと今の関係は崩れてしまうから。
そしたら、誰かと、必ず距離が空いてしまうのは目に見えてる。
だったら、もう少しだけ。
今は、このままがいい。
例え、報われないことが分かっていても。
南「……そう言うと思った、」
紗希ちゃんは、困ったように笑う。
ごめんね、苦しくして。
でも、こうでもしないと、きっと私も紗希ちゃんも幸せになれないから。
『一緒に頑張ろうよ、紗希ちゃん』
南「……うん、」
報われないなら、せめて。
足掻くくらいは、許してくれますか?
そんな願いを、誰に言うでもなく、痛いくらいに晴れている空に心の中で願った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。