───これは、付き合って3ヶ月が経った2人のお話。
季節はすっかり秋。
窓から見える校庭は、赤や黄色の紅葉で彩られている。
そして、もうすぐ先輩たち2年生は、3泊4日の修学旅行へと旅立ってしまう。
それが寂しくて、寂しくて……今から気分がブルーの私を梨花は"大袈裟"だと笑う。
もちろん梨花は、"お兄ちゃんがいない3日間なんて幸せすぎる"と羽を伸ばす気満々のご様子だ。
***
───昼休み。
付き合い始めてからは週に1、2回、先輩とお昼を一緒に食べている。
いつものように先輩の教室までやってきた私は、いつもとは違う光景に目を疑った。
見れば、クラスの女の子たちが先輩を取り囲むように群がっていて、その中心にいる先輩はほぼ廃人と化していた。
……ま、まさか!
ここにいるのはみんな、修学旅行で先輩と同じ班を狙ってる子たちってこと!?
う、嘘でしょ……。
一応、先輩には彼女がいるんですけど!!
女子たちにもみくちゃにされていた先輩が、不意に私に気付く。途端、嬉しそうに口角を上げるから、さっきまでのハラハラもどこへやら……私の口角まで緩んでしまった。
それだけを早口で告げると、女子たちを振り返ることなく私の元にかけてくる先輩。
私の頭をポンポンと優しく撫でてくれる手を嬉しく思いながらも、プクッと膨らんだ私の頬は元に戻らない。
だってだって、不安なんですよ。
私と会えない間にも……クラスの女の子たちは先輩と一緒にいられるなんて。
考えただけで……不安。
私の鎖骨にチュッと唇を寄せた先輩に、ビクッと身体がはねる。
そんな私を余裕な顔して愛でる先輩に、今日もドキドキさせられっぱなしです。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。