第3話

No.3
1,802
2023/08/21 05:19 更新









食欲も湧かない。





やる気も出ない。







俺の心が、空っぽみてぇだ。








ただぼーっと一点を見つめる。








19歳。





二十歳を迎える前に姉は命を絶たれた。


















高校卒業して2年程。





一緒に住んでいたこの部屋から、いや








19年間一緒にいた片割れの姉が急にいなくなってしまうのはこんなにも辛く、苦しいことなのかとひしひし思う。







ふと、一本の剣が目に入る。









大事に飾ってあるそれは、姉の個性である硬剣。







剣を作り出せる個性だ。個性特訓で初めて作り出した最高傑作だと言って、姉はそれを丁寧に飾っていた。










入れ物に近づく。









あなた
『私が矛になるなら、鋭児郎は盾だね!』
あなた
『お互いに矛と盾だ!』
切島鋭児郎






ふと、姉の言ったその言葉が蘇る。







切島鋭児郎
…あなたの下の名前が矛なら、俺は、





独り言をブツブツ呟く。







切島鋭児郎
また、強ぇやつ、作ってくれよ、
切島鋭児郎
、あなたの下の名前、あなたの下の名前
切島鋭児郎
ッ、あなたの下の名前、あなたの下の名前っ、!






呟くほどに寂しさが増す。







俺は何度も何度も姉の名前を呼び続ける。






切島鋭児郎
なぁ、あなたの下の名前、!あなたの下の名前!
切島鋭児郎
ッ、戻ってこい、戻って、来てよ、





その時













ぽと







切島鋭児郎
…は、?






俺の手の甲に一滴の何か。







その水滴は止まることを知らない。







どんどんどんどん零れてくる。







それを涙だと理解するのには時間がかかった。








切島鋭児郎
え、あ、おれ、なんで、
切島鋭児郎
なかないって、きめて、





目を拭ってもどんどんどんどん、涙は止まらない。








切島鋭児郎
泣くなんて、男らしく、
あなた
『男らしくないなんてことはないよ』
切島鋭児郎
あなた
辛い時は吐き出そう?泣きたい時は泣こう?私が受け止めるから
切島鋭児郎
え、、





目の前には















姉がいる。








あなた
ほら、こっちおいで鋭児郎
切島鋭児郎
は、あなたの下の名前、?
あなた
うん、ほら、おいで
切島鋭児郎
、、!





ずりずりと姉の膝に詰め寄る。









頭を姉の太ももに預けようと頭を傾ける。と





















ゴッ











切島鋭児郎
っ、!てぇ、






俺の頭は姉の太もも、ではなく








床にあった。








切島鋭児郎
っ、ついに幻覚まで見ちまってんのか、






姉の、あなたの下の名前のところでもう叫び出したかったのに、









この現実から逃げ出したかったのに













神様はそれを、現実はそれを許してくれることは無い。














俺の鼻をすする音が静かに部屋に響いた。

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