□side
「けいちゃんっ…、てごちゃんどうなっちゃうの、?」
「大丈夫。手越の居場所は俺らが守るから」
あなたにはそう言ったけど、手越から「NEWSと事務所をやめようと思ってる」っていう話はもう既に聞いてた。
その話はまだ、あなたにはしてない。
『信頼してる人』との別れを小さい頃に体験してるあなた。
自分が邪魔になっちゃったんじゃないか。
そう思っちゃうみたい。
結局後々伝えることにはなるんだけど、今休校中で友達にも会えてない中で、そんな話をするのは俺が…っていうかメンバーみんなが躊躇ってて、中々話そうと思っても話せなかった。
「あなた…?今日、一緒に事務所来てくれないかな。スタッフさんとかには話してあるから」
「……迷惑じゃない?」
「ならないよ。俺たちがお願いしてるんだし」
「分かった、準備してくるね」
自分の部屋で着替えてから戻ってきたあなた。
首元には、この間あげたSTORYのツアーグッズのネックレスが輝いてた。
「しげさん、まっすー」
「あなた。久しぶりだね」
「ちゃんとご飯食べてた?」
「食べてたよ」
何回か事務所に来たことはあって、顔見知りのスタッフさんもいるあなた。
ここ2,3ヶ月はシゲとまっすー、……それから手越にもリモート越しでしか会えてなかったからシゲとまっすーとは久々の再会。
2人があなたの首元をみて、少しだけ切なそうな顔をしてたのは俺の気のせいかな。
「それではNEWSさん、お願いします」
「え、てごちゃんは…?」
「ごめんね、あなた。……マネージャーさんの横で、見ててもらっていいかな、」
そう伝えると少し不思議そうな顔をしながらマネージャーさんの隣に行ったあなた。
カメラが回る。
俺が、話し出す。
『手越祐也がNEWSから脱退、ジャニーズ事務所からも退所いたします』
そう言った時のあなたの顔は見れなかった。
いや、見たくなかったの方が正しいのかな。
初めて会った時から、悲しい思いだけはさせないようにしてきた。
辛い体験をしてきたあなたに悲しい思いはさせたくなかった。
動画を撮り終えたらすぐに俺の元に来たあなた。
「っ……。てご、ちゃんは、もう、ここにっ、いないの?みんなの、仲間じゃ、ないのっ?」
泣きながらそう言ったあなたを「ごめんね、」って言いながら抱きしめることしか出来ない。
シゲとまっすーも少し離れた場所にいた。
きっと2人とも、今すぐあなたを抱きしめたくて仕方なかったと思う。
けど、事務所から「あまり近づきすぎないで」って言われてるからグッと我慢してるんだと思う。
あなたに、こんな思い、させたくなかったな。
あなたに、こんな表情、させたくなかったな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!