第8話

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2022/03/30 06:13
□side


「けいちゃんっ…、てごちゃんどうなっちゃうの、?」

「大丈夫。手越の居場所は俺らが守るから」



あなたにはそう言ったけど、手越から「NEWSと事務所をやめようと思ってる」っていう話はもう既に聞いてた。

その話はまだ、あなたにはしてない。


『信頼してる人』との別れを小さい頃に体験してるあなた。

自分が邪魔になっちゃったんじゃないか。
そう思っちゃうみたい。




結局後々伝えることにはなるんだけど、今休校中で友達にも会えてない中で、そんな話をするのは俺が…っていうかメンバーみんなが躊躇ってて、中々話そうと思っても話せなかった。



「あなた…?今日、一緒に事務所来てくれないかな。スタッフさんとかには話してあるから」

「……迷惑じゃない?」

「ならないよ。俺たちがお願いしてるんだし」

「分かった、準備してくるね」



自分の部屋で着替えてから戻ってきたあなた。

首元には、この間あげたSTORYのツアーグッズのネックレスが輝いてた。




「しげさん、まっすー」

「あなた。久しぶりだね」

「ちゃんとご飯食べてた?」

「食べてたよ」



何回か事務所に来たことはあって、顔見知りのスタッフさんもいるあなた。

ここ2,3ヶ月はシゲとまっすー、……それから手越にもリモート越しでしか会えてなかったからシゲとまっすーとは久々の再会。


2人があなたの首元をみて、少しだけ切なそうな顔をしてたのは俺の気のせいかな。




「それではNEWSさん、お願いします」

「え、てごちゃんは…?」

「ごめんね、あなた。……マネージャーさんの横で、見ててもらっていいかな、」



そう伝えると少し不思議そうな顔をしながらマネージャーさんの隣に行ったあなた。


カメラが回る。


俺が、話し出す。



『手越祐也がNEWSから脱退、ジャニーズ事務所からも退所いたします』



そう言った時のあなたの顔は見れなかった。

いや、見たくなかったの方が正しいのかな。


初めて会った時から、悲しい思いだけはさせないようにしてきた。

辛い体験をしてきたあなたに悲しい思いはさせたくなかった。




動画を撮り終えたらすぐに俺の元に来たあなた。



「っ……。てご、ちゃんは、もう、ここにっ、いないの?みんなの、仲間じゃ、ないのっ?」



泣きながらそう言ったあなたを「ごめんね、」って言いながら抱きしめることしか出来ない。


シゲとまっすーも少し離れた場所にいた。

きっと2人とも、今すぐあなたを抱きしめたくて仕方なかったと思う。
けど、事務所から「あまり近づきすぎないで」って言われてるからグッと我慢してるんだと思う。





あなたに、こんな思い、させたくなかったな。
あなたに、こんな表情、させたくなかったな。


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