翌朝。先輩は自身の映画に使用した
ダンスミュージックを爆音で流し、私たちに起床を促した。
またいつものように日の出後すぐに目を覚ましていた私は、
隣のベッドに近付き声をかける。
テーブルにはホットサンドとスープ、
それに卵料理をいくつか並べている。
少し冷めてしまっているが、味は問題ないだろう。
そうして二人で朝食を取っていると、
斜め向かいの部屋から賑やかな声が聞こえてくる。
『早く起きてってば!』
『僕のTシャツどこ〜!?』
『早く洗面台空けてよ〜!』
もうすっかり覚えてしまった声から
それぞれの光景を思い浮かべ、
リアと話しながらも心の中では笑いが抑えられなかった。
そこから少しの時間を経て、今は皆でホールにいる。
また空気が張り詰め、真剣な雰囲気が漂う。
「収穫祭のシーンに移る」と宣言し、
ダンスとボーカルのリーダー・副リーダーを呼ぶ。
合わせて3RACHAも前に出てきて
先輩から指揮のバトンを受け取った。
その言葉を合図に、私はステージの端に立つ。
くるくると回転しながら中央まで移動し、
そっと声帯を震わせる。
“サラン”のソロパートの後、
ヒョンジナを除く多くの人がステージを舞う。
その途中で、リノオッパが声を上げた。
まだ物語の初めのほうだというのに、
厳しく的確な指摘の連続である。
皆、稽古中の緊張やプレッシャーは
ピークに達していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!