🐙🌟視点です。
無色透明エンド。
ざっと周囲を見渡した後、敵がいなくなったことを確認して触手をしまう。
元はそこそこな規模のコンサートも開けるようなホールだったはずだけれど、そこは無惨な形で壊されていた。
座席は後ろの方は全壊し、天井も一部壊れている。
着いたときにはもう人影は見えなかったものの、敵が現れた時にその場から市民を避難させる部隊が一足先に出動していたからそのはずだ。
俺は変身を解いたうえで、誰かに見られてもいいようにラフな私服に着替える。
そう呟いて舞台へ目を向けた時だった。
舞台の下、1列目の座席部分。
そこで、誰かが一人舞台を見つめていた。
一歩間違えれば死んでいてもおかしくなかった。
その人のもとへ駆け寄ると、ゆるりとこちらを振り返る。
びっくりした。
人ならざる者のような、どこか俗世離れしたような神秘的な雰囲気をその人はまとっていたから。
灰色のパーカーを羽織り、フードを被っているから年齢や性別も分からない。
分かるのは、澄んだ瞳の色だけだった。
その人はクスクスと笑うと、ふっと笑顔を消してもう一度舞台へと視線を戻した。
その人はその質問には答えず、ふわっと微笑むと壊れかけの階段を登っていった。
舞台の中央へ進み、パーカーを脱ぐと客席へと投げ捨てる。
そのままふわりと左腕を上げて目を伏せると、ゆったりと踊り始めた。
左回転、体を折ってしゃがみ込み、すぐに立ち上がって顔を上げ何かにすがるように腕を伸ばす。
それは、踊りへの知識があるとは言えない俺でも分かるほどクオリティの高いものだった。
くるくる、ゆるゆる、ひらひら、その人は踊り続ける。
紺色の衣装に月の光が当たって、世界の時間が止まったかのように俺は舞台の上を見続けていた。
夢現の状態からハッと意識が戻ったのは、その人が舞台の上でふらりと倒れた時。
俺は慌てて舞台の下へ落ちてくるその人を抱きとめた。
時計を見れば、討伐が終わった時から4時間経っている。
そんなにも長い時間踊り続けていたのかと驚き、それと同時に腕の中のその人が思っていたよりも細く小さいことにも驚いた。
自分の腕の中で息を荒げるその人を改めて見れば、まだ成人していないであろう年頃の、少女と呼んでも差し支えのない姿をしている。
体調を確認するために顔を覗き込み、その泣きそうに崩れた笑顔を見て凍りつく。
ほろほろと涙をこぼしながら、けれどそのことに気づいていないように俺から体を離そうとする少女の腕を思わず掴む。
どうしてか、今彼女を離したらもう二度と手の届かない場所に行ってしまいそうな気がした。
俺の言葉を聞いて、彼女は少し目を見開いてからくすりと笑った。
言おうとしていたことを先回りして言われ、思わず閉口する。
少女はまたクスクスと笑うと、今度こそ俺の手を振りほどいて離れていった。
パーカーを羽織りながら、少女はしばし考え込む。
少女が次に口を開いたのは、パーカーのフードまで被り終えた後だった。
そう言って、彼女は先程俺の腕の中で見せた泣きそうな幼い笑顔ではなく、大人びたどこか危うい笑顔を浮かべた。
そのまま深々と頭を下げて感謝の言葉を伝えたあと、彼女は振り返ることなく崩れたホールから出ていった。
俺は、そんな彼女に声を掛けることもできず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
お久しぶりです。
ほんとにお久しぶりです。
リクエストも出さず!!!大変申し訳ありません!!!!
私生活が忙しすぎる……ほんとすみません……途中まで書いてあるので……そのうち出します……
ところで皆様、にじ歌謡祭ご覧になりました?
びっくりしましたよ。
「悪役になるだけで君を愛せるなら」って。
へぇ……?
ということで速攻妄想が捗りまして書きました。
あれですね、曲が本編で、このお話はそれの過去編みたいなものです。
きっとこんなことがあった数年後、その、バーというかなんというかみたいなところで踊り子として働くんでしょうね。んで、星導と再会すると。
歌詞がちょいセンシティブ、というかモロだから……本編は書きにくいですけれども……
それでは皆様、ご覧になってくださりありがとうございました!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。