夜。
Fukaseは急いでヨルの家へ向かった。
何度電話しても出ない。
メッセージも既読にならない。
「頼むから無事でいてくれ……」
小さく呟く。
到着すると、部屋の明かりはついていた。
インターホンを鳴らす。
反応はない。
もう一度鳴らす。
それでも返事がない。
Fukaseの心臓が嫌な音を立てる。
その時。
ドアの向こうから、かすかに物音がした。
「ヨル!」
声をかける。
しばらくして、ゆっくりと鍵が開いた。
そこにいたヨルは、顔色が悪く、ふらふらしていた。
「……Fukase」
力のない声。
Fukaseはすぐに支える。
「大丈夫か?」
ヨルは小さく首を振る。
「ごめん……」
「うどん作ったんだけど」
「食べられなくて……」
Fukaseは部屋を見回す。
キッチンには片付けられた食器。
作ろうとした形跡だけが残っていた。
「謝るな」
静かに言う。
「まず座ろう」
ソファまで連れていく。
その頃。
電話越しで状況を聞いていたSaoriも安心したように息を吐いた。
「無理しすぎなのよ、あの子」
隣のNakajinも頷く。
「解散準備も引っ越しも重なってるからね」
部屋では。
Fukaseが水を用意する。
「少しずつでいいから飲める?」
ヨルは小さく頷く。
「……うん」
少し飲んでから、目を伏せる。
「やることいっぱいで」
「気づいたら食べられなくなってた」
Fukaseは隣に座る。
「頑張るのはいい」
そして少し困ったように笑う。
「でも倒れるほど頑張るのはだめ」
ヨルは黙る。
図星だった。
「一人で抱え込みすぎ」
Fukaseは続ける。
「解散も、引っ越しも、音楽も」
「全部今日やらなくていいんだよ」
ヨルの目から、ぽろっと涙が落ちる。
悲しい涙じゃない。
張り詰めていたものが緩んだ涙だった。
Fukaseはティッシュを差し出しながら言う。
「今日は休もう」
「続きは明日」
ヨルは小さく頷いた。
その夜だけは、未来の話も計画の話も置いておいて。
ただ静かに休むことになった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。