街はお祭りムードで、人は少ないが家の庭などに、にぎやかな飾りがある。
きっと、広場や商店街に人が集まっているのだろう。
僕らが居た宿屋を振り返ると、どの家よりも豪華で派手に飾られていた。
たかちゃんが列車、というかトロッコ駅のベンチに飴を舐めながら待っていた。
今日の服装は昨日の汚れたツナギとは違ってシャツにジーパン。
体型がスラッとして手足も長いたかちゃんにはすごく似合ってる。
たかちゃんがフッと乾いた笑いで誤魔化す。
クリーム色の髪から赤くなった耳がチラリと見えた。
そう、たかちゃんは今、照れているのだ!
たかちゃんがトロッコに乗り込んで駅のおじさんにお金を渡す。
トロッコの中は思ったより快適そうでフカフカの椅子とシートベルト。
駅のおじさんが部屋から顔をだして、出発の合図をだした。
ゴトゴトガシャンガシャンと石の上にしかれたレールとタイヤが雑にぶつかりあって音をならす。
一樹くんが腕を組ながら不満そうに兄ちゃんを睨む。
ドンと真ん中に座る兄ちゃんが子供みたいに駄々をこねる。
兄ちゃんがニヤッとして向かいの女子席を指差す。
一樹くんが怖い顔の四季さんを見て尋ねる。
向かいの女子席、しかも斉藤さんの隣なんて絶対に殺られる。
たかちゃんがヘラヘラといつもみたいに笑って、隣に座る咲希さんをワシャワシャと撫でる。
遠くの方にカラフルなものが見えた。
バルーンに紙吹雪、カーニバル。
賑やかなお祭りの雰囲気が想像できる。
遠くの方から楽しい音楽も聞こえる。
本来は僕らのための祭りだが、今はただの祭りになっているらしい。
形だけは僕らを歓迎してくれるといいけど。
たかちゃんがカバンから陽気なコスチュームをとりだす。
サングラス、カチューシャ、三角帽子にたすき。
四季さんは眉間にシワを寄せてストンと肩を落とす。
兄ちゃんがケーキ型のサングラスとパーティ用の三角帽子をかぶる。
本日の主役、そう書かれたふざけたタスキを肩にかければ、いつもの兄ちゃんの出来上がり。
ハートのサングラスを不満な顔でかけている四季さんがちょっと面白い。
うざきみたいなカチューシャをかけてニカッと笑う。
兄ちゃんが黒猫のカチューシャを一樹くんに渡す。
全部じゃん。
たしかに兄ちゃんと同じコスチューム。
一樹くんがとてつもなく嫌そうな顔で兄ちゃんを睨んだ。
二人でクスッと笑ったあと、僕はボーッと祭りの方を見つめる。
小さく駅が見えた。そろそろだ。
カランカランカランと可愛くベルが鳴って、トロッコがピタリと止まった。
僕達はトロッコから恐る恐る降りて、キョロキョロと周りを見る。
駅には既にたくさんの人がいて皆一斉にクラッカーをならした。
駅のおじさんがニカッと笑って僕の髪をわしゃわしゃと撫でる。
たかちゃんが急な無茶振り。
きっと名前だけで良いのだろうけど、こんな大人数の前で話すなんてできない。
名前だけじゃダメになったみたいだ。
順番的に次は僕、さすがにヤバイ。
ボソボソと小さな声でうつむきながら自己紹介をする。
恐る恐る顔をあげると周りはニコニコと笑ってくれていた。
よく考えれば当たり前だ。この人達は僕らを歓迎するために来てくれてるのだから。
四季さんが単語だけをツラツラと並べている。
咲希さんは四季さんと違って元気よく可愛く自己紹介をする。
咲希さんは元気で可愛い。
危ない危ない、これじゃ咲希さんが好きみたいに聞こえるじゃないか。
何から逃げたいのかは分からないけど、僕は一樹くんのことがちょっと心配に思えた。
皆は紳士っぽくふるまうたかちゃんを面白そうに茶化したり拍手して歓迎した。
たかちゃんはランプシーの人気者らしい。
たかちゃんが急に僕を当ててきて、ビクッとする。
たかちゃんがニコッとウインクをした。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。