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第12話

11,歓迎会の始まり
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2026/03/01 01:00 更新




街はお祭りムードで、人は少ないが家の庭などに、にぎやかな飾りがある。
きっと、広場や商店街に人が集まっているのだろう。
僕らが居た宿屋を振り返ると、どの家よりも豪華で派手に飾られていた。
高瀬琉依
 お、キタキタ 
たかちゃんが列車、というかトロッコ駅のベンチに飴を舐めながら待っていた。

今日の服装は昨日の汚れたツナギとは違ってシャツにジーパン。
体型がスラッとして手足も長いたかちゃんにはすごく似合ってる。
斉藤咲希
 たかちゃん私服かっこいいー 
高瀬琉依
 えー、どこがぁ? 
たかちゃんがフッと乾いた笑いで誤魔化す。
クリーム色の髪から赤くなった耳がチラリと見えた。
そう、たかちゃんは今、照れているのだ!
高瀬琉依
 あー、もう行くよ 
高瀬琉依
 ほら、乗った乗った 
たかちゃんがトロッコに乗り込んで駅のおじさんにお金を渡す。
トロッコの中は思ったより快適そうでフカフカの椅子とシートベルト。
駅のおじさんが部屋から顔をだして、出発の合図をだした。
ゴトゴトガシャンガシャンと石の上にしかれたレールとタイヤが雑にぶつかりあって音をならす。
藤原 一樹
 なんで俺がお前の隣なの? 
藤原 一樹
 葵と変われよ 
一樹くんが腕を組ながら不満そうに兄ちゃんを睨む。
橘 優
 やだやだ!! 
橘 優
 俺は真ん中がいいの!! 
ドンと真ん中に座る兄ちゃんが子供みたいに駄々をこねる。
橘 優
 あ、斉藤さんの方いけば? 
兄ちゃんがニヤッとして向かいの女子席を指差す。
藤原 一樹
 …… 
藤原 一樹
 死ねってこと? 
一樹くんが怖い顔の四季さんを見て尋ねる。
向かいの女子席、しかも斉藤さんの隣なんて絶対に殺られる。
高瀬琉依
 元気だねー… 
たかちゃんがヘラヘラといつもみたいに笑って、隣に座る咲希さんをワシャワシャと撫でる。
橘 葵
 あ、! 
遠くの方にカラフルなものが見えた。
バルーンに紙吹雪、カーニバル。
賑やかなお祭りの雰囲気が想像できる。
遠くの方から楽しい音楽も聞こえる。
斉藤咲希
 あれって私達のための祭りなんだよね? 
高瀬琉依
 今はただの祭りだけどねん 
本来は僕らのための祭りだが、今はただの祭りになっているらしい。
形だけは僕らを歓迎してくれるといいけど。
高瀬琉依
 あぁ、あとこれ、つけな 
たかちゃんがカバンから陽気なコスチュームをとりだす。
サングラス、カチューシャ、三角帽子にたすき。
斉藤四季
 うわ…これだから祭りはやなんだよ 
四季さんは眉間にシワを寄せてストンと肩を落とす。
橘 優
 俺はたすきと帽子とサングラスね 
兄ちゃんがケーキ型のサングラスとパーティ用の三角帽子をかぶる。
本日の主役、そう書かれたふざけたタスキを肩にかければ、いつもの兄ちゃんの出来上がり。
藤原 一樹
 全部じゃん 
橘 葵
 ぼ、僕は帽子とたすき 
斉藤四季
 ……サングラス 
ハートのサングラスを不満な顔でかけている四季さんがちょっと面白い。
斉藤咲希
 私はカチューシャ!! 
うざきみたいなカチューシャをかけてニカッと笑う。
橘 優
 一樹くんカチューシャつけてよ 
兄ちゃんが黒猫のカチューシャを一樹くんに渡す。
藤原 一樹
 俺がこれつけたら耳が変…だろ 
橘 葵
 たしかに、 
橘 優
 じゃあたすき? 
藤原 一樹
 …… 
藤原 一樹
 たすきと帽子とサングラスで 
全部じゃん。
斉藤四季
 おそろ… 
たしかに兄ちゃんと同じコスチューム。
橘 優
 え、俺のこと好き? 
藤原 一樹
 …… 
一樹くんがとてつもなく嫌そうな顔で兄ちゃんを睨んだ。
橘 優
 ごめんって 
橘 葵
 … 
二人でクスッと笑ったあと、僕はボーッと祭りの方を見つめる。
小さく駅が見えた。そろそろだ。
高瀬琉依
 お!そろそろつくよ 
斉藤咲希
 なんかドキドキしてきた、 
カランカランカランと可愛くベルが鳴って、トロッコがピタリと止まった。
僕達はトロッコから恐る恐る降りて、キョロキョロと周りを見る。
駅には既にたくさんの人がいて皆一斉にクラッカーをならした。
おじさん
 いらっしゃい 
駅のおじさんがニカッと笑って僕の髪をわしゃわしゃと撫でる。
高瀬琉依
 自己紹介してー 
たかちゃんが急な無茶振り。
きっと名前だけで良いのだろうけど、こんな大人数の前で話すなんてできない。
橘 優
 橘優、高校1年生 
橘 優
 好きな食べ物はオレンジ! 
橘 優
 弟大好きすぎて神隠しに合っちゃったよーん 
名前だけじゃダメになったみたいだ。
順番的に次は僕、さすがにヤバイ。
橘 葵
 た、橘葵… 
橘 葵
 小学…6年生 
橘 葵
 好きな食べ物は… 
橘 葵
 メロンソーダ…? 
橘 葵
 星が見たくて神隠しに合いました… 
ボソボソと小さな声でうつむきながら自己紹介をする。
恐る恐る顔をあげると周りはニコニコと笑ってくれていた。
よく考えれば当たり前だ。この人達は僕らを歓迎するために来てくれてるのだから。
斉藤四季
 斉藤四季、小6 
斉藤四季
 ホットココアが好き 
斉藤四季
 神隠しはただの気分転換 
四季さんが単語だけをツラツラと並べている。
斉藤咲希
 斉藤咲希!小6 
斉藤咲希
 パンケーキが好きで、神隠しの理由は四季と一緒! 
咲希さんは四季さんと違って元気よく可愛く自己紹介をする。
咲希さんは元気で可愛い。
危ない危ない、これじゃ咲希さんが好きみたいに聞こえるじゃないか。
藤原 一樹
 …… 
藤原 一樹
 藤原一樹、中2 
藤原 一樹
 好きな物は… 
藤原 一樹
 まだない 
藤原 一樹
 ………逃げたかった 
何から逃げたいのかは分からないけど、僕は一樹くんのことがちょっと心配に思えた。
高瀬琉依
 えー、そして今年もたかちゃん改め私、高瀬琉依がこの子らの案内役を努めさせていただきます! 
皆は紳士っぽくふるまうたかちゃんを面白そうに茶化したり拍手して歓迎した。
たかちゃんはランプシーの人気者らしい。
橘 葵
 …… 
高瀬琉依
 あー、少年! 
たかちゃんが急に僕を当ててきて、ビクッとする。
高瀬琉依
 ほら、もっと笑って? 
たかちゃんがニコッとウインクをした。



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