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第48話

【クリスマス】オレとシュトーレン
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2025/12/14 11:18 更新
クリスマス。


それは、年に一度のキラキラ輝く夢の夜。



誰だってこの季節はウキウキワクワクしながらアドベントカレンダーをめくったり、

町で一番大きなガチョウを予約したり、

モミの木に飾るオーナメントを用意したり、

大切な人に贈るプレゼント選びで忙しい。




そして、オレはーーーーー。






あなた
クリスマスと言えば
シュトーレンだ!!!
あなた
オレはシュトーレンを
焼くぞ!



12月に入ったので、

メチャ美味いシュトーレンを焼いてる最中である。
あなた
ドライフルーツをラム酒につけて
あなた
生地を練って膨らませ
あなた
バターに砂糖、卵黄を混ぜ
あなた
クルミとナッツをたっぷり混ぜて
あなた
まな板の上で形を整えて……
あなた
オーブンで焼いたら…
あなた
後は雪のように砂糖を降らせ……
あなた
完成!!!
辺りには焼きたてシュトーレンのいい匂いが漂っている。

オレは包丁でシュトーレンの真ん中を切り、その切り口から一切れスライスして一口。

あなた
うん、美味い。我ながらいい出来だ。
自画自賛!


すると、シュトーレンの匂いに引かれてか、ゾロゾロとみんなキッチンに集まってきた。
チャーリー
なになに? いい匂い♪
ヴァギー
これってお菓子?
それともパン?
あなた
シュトーレンです。
おひとついかがですか?
オレは包丁でスライスして皆に差し出す。
エンジェル
あ! これ知ってる。
ドイツでクリスマスに食べる奴だ。
ハスク
確か、クリスマスの四週間前から
少しずつ食べるんだったか?
あなた
そう。水分が少なく、洋酒やドライフルーツを使ってるから日持ちがいいんだ。
ニフティ
アハハハハ!
お砂糖が雪みたいで甘~い❤️
サー・ペンシャス
ええ、とっても美味しいです。
エッギーズ
ムシャムシャ。
あなた
日がたつにつれ、
味わいも変わってくるんだぜ?
オレのシュトーレンは皆に好評だった。

それが嬉しくて、クリスマスまでオレはシュトーレンを作り続けることになった。



キッチンにシュトーレン用のテーブルを用意し、そこにシュトーレンの皿と、スライス用のナイフを置いておく。

誰でも好きな時に一口スライスできるように。
シュトーレンがなくなりそうになったら、新しいシュトーレンを追加する。
アラスター
おや? シュトーレンですか?
あなた
ああ、アラスター。
クリスマスのお楽しみさ。
新しいシュトーレンを皿に移していると、じっと赤い目がオレを見つめてきた。
アラスター
私には?
あなた
え?
アラスター
私が甘いものが苦手だと、
知っていますよね?
アラスター
皆には美味しいシュトーレンを
振る舞って、私には?
す、拗ねたァァァァァ!!!

ラジオデーモンが拗ねやがった!!!
あなた
わ、わかった。わかったから。
明日は鹿肉のステーキを
振る舞ってやるから。
アラスター
ニャハ❤️ 愛情たっぷりで
お願いします。
ニコニコとご機嫌になるアラスター。


全く、シュトーレンで拗ねなくても。



………………元々アラスター用に
クリスマスプレゼント用意してあるのに。

おっと、これはクリスマスまでの秘密。
恋人へのサプライズだ。
あなた
うちの家系、ドイツからの移民でさ。
あなた
毎年クリスマスには、
こうしてシュトーレンを焼いて
アドベントに毎日食べるのが
我が家の伝統だったんだ。
そのままの流れでクリスマスの雑談となり、オレとアラスターは、ペアのマグカップ(「MY🦌Deer」「LOVE🐺WOLF 」)でコーヒーを飲んだ。
アラスター
なるほど。それではこの
シュトーレンは、あなたの御家庭に
伝わるレシピというわけですね。
あなた
そう! 作り方は普通のシュトーレンと同じだけど、バターの量とか、ドライフルーツの下ごしらえとか、隠し味のスパイスとか、うちのオリジナルなんだよ。
まだ、生前のころは、父さん母さんと一緒にクリスマスを祝ったものだった。

暖かな思い出の中には、いつだって我が家伝統のメチャ美味いシュトーレンがある。
アラスター
ニャハ❤️ 私も母から教わった
ジャンバラヤのレシピを大切に
守っていますからね。
アラスター
そういうのわかりますよ。
素敵なクリスマスですねえ。
あなた
ありがと。
アラスターはどうだったんだよ?
あなた
大人気のラジオスター様なんて、
セレブと盛大にパーティーだろ?
アラスター
ナハナハナハ!
アラスター
ホリデーのラジオスターに
休みなどありません。
目が据わっている!?
アラスター
深夜までぶっ通し生放送!
パーティーどころか、
祝う余裕もありません。
ラジオデーモン
クソプロデューサーども!
人を何だと思っている!?
あなた
………………ご、ごめん。
余計なこと聞いて。
アラスター
いいんですよ。
今、こうして……。
アラスターがそっとオレの肩を抱いた。
アラスター
大切な人と、共に祝う
ことができるのですから。
(。・_・。)ポッ
あなた
オ、オレも……その………。
アラスターと一緒にクリスマスを
迎えられて嬉しいよ。
あなた
誰かと一緒にクリスマスを
祝うなんて………まだ両親が
生きていたころ以来だ。



そう、最後の幸せなクリスマスの思い出は。



まだ16才のガキのころの………。



あの、壮絶な列車事故の後、



クリスマスに食べるシュトーレンは……



冷たい屍肉の味がした……………。




アラスター
何か余計なこと考えてますね?
あなた
えっ!? いや、その………。
あれ? 顔に出したつもりは全然なかったんだけどなあ………?
アラスター
あなた。
あなた
な、なに?
アラスター
やはり、私もシュトーレンを
一切れいただいてもいいですか?
あなた
え? でも、
甘いもの苦手じゃ…………?
オレの返答を待たず、アラスターはシュトーレンを一切れスライスすると、パクリと大きな口の中に放り込んだ。


そのままモグモグと咀嚼し…………。


アラスター
………………やはり甘いですね。
あなた
無理すんなよ。
砂糖をふりかけてんだぞ。
アラスター
口直しが欲しいです。
あなた
アラスター………?
そのまま、


ヤドリギもないのに、


アラスターはオレにキスをした。




バターの香りと、ドライフルーツの甘酸っぱさと、洋酒の匂いが深いキスに混ざりあった。


アラスター
メリークリスマス。My Dear。



そう言ってアラスターはオレを抱き締めた。




温かい。なんて幸せなクリスマスなんだろう。




あなた
メリークリスマス。アラスター。
あなた
愛してるよ。


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