
深夜 01:12
窓を少しだけ開けているせいか、
カーテンがほそく揺れている。
遠くの国道を走るトラックのエンジン音が、
ときどき低く響く。
それ以外はやけに静かで、
俺の隣に感じるあなたの呼吸だけが
やけにくっきりと伝わる。
ベッドの中、
あなたが腕を伸ばして俺を抱きしめてきた。
頭を撫でられる感触。
指先が髪をととのえるたび、
首すじにやわらかな体温が落ちていく。
「 ねぇ、千空 」
声が小さく、囁きに近い。
俺はまぶたを半分閉じたまま返事をする。
「 ……ん 」
「 今日さ、研究室の先輩に
“あの論文の考察、天才か?”って
言われたんでしょう? 」
「 おい、どっから聞いた 」
「 ふふ、秘密 」
指が髪をくしゃっとかき回したあと、
額にそっと触れる。
冷たい指先が、やがて温かくなる。
「 ほんと、そういうとこ尊敬してるよ
無駄口叩かないで結果だけ叩きつけてくる感じ
……でもたまにムキになって
寝不足で倒れるのはいただけないけどね 」
「 皮肉を混ぜんのが、てめぇらしいな 」
「 だって、千空って万能だけど、
案外ポンコツなとこもあるんだもん
そこも好きなんだけどさ〜」
肩のあたりを軽くつつかれる。
言葉の最後だけ、
少し、息を呑んだように震えていた。
「 ……どーも 」
それしか言えなくて、
俺は腕を伸ばし、
背中を抱くようにあなたを引き寄せる。
体温と呼吸がかさなった。
「 千空 」
「 ……あ? 」
「 ほんとはね、
もっと前に言おうと思ってたんだけど……
私、 多分、 もう…… 」
ふ、と天井の暗闇が遠ざかった。
眠気で意識が縁取られはじめていたのに
今の言葉が妙にくっきり刺さる。
ーー 何だ、今の
けれど声は小さく、
まるでベッドの中に湧いた幻聴のようだった。
「 ……何、言った 」
聞き返そうとした瞬間、
彼女は息を呑んで、笑ったような気配を見せた。
「 内緒 」
それきり黙りこくり、
俺をそれまでより少し強く抱きしめた。
髪がかすかに揺れて、
甘い匂いがひとつ深く吸い込まれる。
俺は眠気に引き戻されながらも、
胸の裏側がざわついて止まらなかった。
こんな日々は、これからも続いていく。
根拠もなく、そう思い込んでいたはずなのに。
遠くの街灯の光が、
カーテン越しにやわらかく瞬いている。
手も声も確かにここにあるのに、
なぜだか、その輪郭だけが
少しずつ透けていくような感覚があった。
抱きしめた背中を、指先で強く確かめる。
温度は、たしかにここにある。
そう自分に言い聞かせるうちに、
視界がゆっくり滲んでいった。
ーー 静寂と温もりだけが重なり、
夜は、深く深く沈んでいく。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。