前の話
一覧へ
次の話

第1話

1話☁️
257
2020/07/09 14:35
生暖かい風が頬を横切る
降り頻る雨は私の気分を曇らせる
傘を開いて歩き出す。
雨がより一層強くなり蒸し暑さで汗が垂れた
私はどこへ行っても居場所がない

これまでの場所もこれからも
美咲や由莉からの私へ向けられた冷徹な視線に耐えられない
クラスの雰囲気を悪くしているのはあいつらのせいだ

学校へ行きたくない部活をしたくない
顧問が嫌い担任が嫌い
どれだって理由なんかないのに
取ってつけた建前で他人を蹴落とすあの女は吐き気しかしない
ジメジメとした梅雨の時期は私の心を表している様だった。

私は登校するのをやめた
両親もロクに世話しない私の事なんて何も知らないのに
親のフリをして飾った上部だけの家族なんていらない

これ以上私の人生に踏み入らないで
踏みにじらないで

公園に向かって歩き始めた
登校途中の同級生には変な視線を向けられる
でも由莉の冷徹な視線よりかはマシだ
差別されて軽蔑されて。
人生ってなんのためにあるんだろ。

そんな事を降り頻る雨の中歩き続けた
公園に着くと地盤が緩み遊具は濡れていた
私はその中で目線の先にあるブランコに座った
この際濡れていたってどうでもいい
このまま死にたい存在意義なんか無いから
私を何処かに連れ出して欲しい
傘を捨てて泣き喚いた
誰もいないのに誰かいる様な気がしてしきりに目線を下げた

その時声をかけられた
大人だ怖い誘拐殺人
私の頭の中に言葉を羅列して飾った
走り出せない足がすくんで動けない
「あの?大丈夫?ハンカチ使う?」

気づけば私はその人の傘の中に入れてもらっていた
「へー…うんうん…辛いよね…大丈夫だよ…」
そんな言葉を並べて私に優しく声をかけてくれた
安堵して全てを話したこの人になら何をされてもいい
心がぽっきりと折れた

鼻を啜り顔を隠す様に体を寄せる
気づいた頃には2時間も話していた

「ごめんなさい、私なんかの話…」
「ね?もしよかったら今からお茶しない?」

私はそれを軽率に受け入れた
ナンパとも誘拐とも思わず
ただ誰かに私の存在意義を見出してもらえた気がして

後々聞いた
この方は日本に誇れるトップYouTuber
東海オンエアのメンバーらしい
確かに幸や歌恋も好きだった
今はそんな話すら目線すら合わせてもらえない
惨めな自分が嫌いだ

りょうさんはとてもいい人だった
私は家出したかった今すぐにでも
だめもとだった無理かもしれない怖い
断られたらどうしよう
そんな事ばかり考えながら勇気を振り絞った
「りょうさんの家に泊めてくださいませんか…?」

りょうさんは少し困った後
「いいけど…俺の家で大丈夫?何されるか分かんないでしょ?」
大人の余裕を見せつけられた

「光栄です 泊めてくださるんですか?」
私は悔い気味にそう言った
「もちろんだよwwwww」
けたけたと笑いながら頭を撫でられた

人に頭を撫でられたのは何年ぶりだろう
嬉しくて涙が止まらなかった
カフェで頼んだココアもいつの間にか冷めていた

りょうさんは私を自分の体に引き寄せ半ば強引に店を出た
「まいったなぁ…俺が泣かせたみたいになっちゃった…」
そう言って身長差がある私でもりょうさんが困りながら私に腕を回し
体に抱き寄せ隠してくれているのだ

生暖かい風の匂いではなくすごくいい香りがした
もっとこうしていたい
私が初めて自分の口から自然に溢れた言葉だった

りょうさんはタクシーを呼んで私の家まで届けてくれた
もう終わりか
また明日から平凡でつまらない単調な日々が続く
そう思うと鬱になりそうだ

去り際にりょうさんの連絡先が書かれた紙を渡された
そこにはいつでも連絡していいからね
と書かれていた

明日にでも連絡しよう
胸の高鳴りが止まらなかった
私は恋した
気がつかなければよかった
鍵をかけてしまおう

家出する準備は完了だ
着替えにお金パスポートも持った
少しでも心配すれば良い

りょうさんはからもらった紙を開いて電話番号を携帯に打ち込んだ。

2話に続きます😖💖

プリ小説オーディオドラマ