第15話

そんなの、勘違いしそうになる
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2023/02/19 05:00
沢村 花乃
沢村 花乃
あ、秋汰じゃん!
 秋汰と話をしていると、前の席に女子が座ってきた。
 この女子って確か……名前なんだっけ。
茜 秋汰
茜 秋汰
おおお! 久しぶりやんな
沢村 花乃
沢村 花乃
うん! あと……津村くん、だよね?
津村 魁
津村 魁
え……、うん
 まさか俺に話しかけてくるとは思っていなかったから、思わずキョドってしまった。

 だってさ……印象いい訳ないじゃん。
 マウントとるみたいな事したんだし……
沢村 花乃
沢村 花乃
あたし、花乃っていうの。よろしくね!
津村 魁
津村 魁
花乃さん……ね、了解
 苗字か……? まぁいいや、相手も別に俺の事嫌ってるわけじゃなさそうだし、とりあえず安心した。
沢村 花乃
沢村 花乃
前から話してみたいって思ってたんだぁ! LINE交換しよーよ!
津村 魁
津村 魁
え……
茜 秋汰
茜 秋汰
ちょ、つむは俺のなんやけどー……?
沢村 花乃
沢村 花乃
いいじゃん! いつも独り占めしてるんだし
茜 秋汰
茜 秋汰
……そういうわけちゃうし
 花乃さんは「ケチー」といじけたように言って、他の席へと移ってしまった。

 秋汰の事が好きなのかと思ってたけど、別にそういうわけじゃないのか……? 三ツ矢さんと同じで皆に優しいというか、そういうタイプなのかもな。
津村 魁
津村 魁
俺、あの人のこと性格悪い人だと思ってたわ
茜 秋汰
茜 秋汰
んー……性格悪い訳ちゃうけど……グイグイ来すぎやんな
 ふーん、と不意に窓の外を見ると、空は暗く雨が降っていた。

 やべ、傘持ってきてたっけ? どーするか。
津村 魁
津村 魁
なぁ、秋汰……お前傘持ってきてる? 雨降ってきたんだけど
茜 秋汰
茜 秋汰
ホンマや、俺も持ってきてないねん! もうそろ帰らなあかんって思っとったんやけど……
 降り始めなのか、まだ幸いパラパラ降ってるくらいのレベルだし、今ならまだ傘がなくても大丈夫なはず。
津村 魁
津村 魁
まぁ、これくらいなら大丈夫だろ。送ってくから先帰ろうぜ
茜 秋汰
茜 秋汰
せやな! じゃあ皆に伝えてくるわ
 10分くらい待っていると、小走りで秋汰が駆け寄ってきた。
 まだ雨は小降りだ。
津村 魁
津村 魁
秋汰寒くない? フード被っときな?
茜 秋汰
茜 秋汰
寒いわぁ……春とはいえまだ寒いしなぁ……
津村 魁
津村 魁
……だよな
津村 魁
津村 魁
とりあえずこれ着とけよ
 寒そうにしている秋汰があまりにも可哀想で、俺は着ていたカーディガンを脱いで、秋汰にそっと羽織らせた。
茜 秋汰
茜 秋汰
つむは寒くないん?! 風邪ひくで?
津村 魁
津村 魁
俺は大丈夫、別に寒くないし
 まぁ、でも……リアルな話すると、秋汰の家まで送って自分の家まで歩いてると、さすがに寒すぎて無理かもな……

 秋汰が風邪ひくよりは全然いいけど……
 そうしてだべっている間に、秋汰の家へと到着した。

 エレベーターの暖房がすげぇ温かい……
茜 秋汰
茜 秋汰
やっと家やで……ホンマ寒い……
津村 魁
津村 魁
家ついたら風呂入って温まれよ?
茜 秋汰
茜 秋汰
そーするわー……
 そうこうしているうちに、秋汰の家の前まで着いた。
津村 魁
津村 魁
じゃあまた明日な
 そして、エレベーターの方へと戻ろうとした瞬間……
茜 秋汰
茜 秋汰
え、上がってかんの?!
 秋汰は俺の腕を掴んで引き止めた。
 秋汰の家に上がる……? でも、こんな遅い時間に、迷惑になりそうじゃね……家族もいるだろうし。
津村 魁
津村 魁
いや、俺は大丈夫
茜 秋汰
茜 秋汰
絶対寒いやろ?! 服乾かすだけでもした方がええよ?
 秋汰は掴んだ腕を離そうとしない。こうなった秋汰は割と頑固だ。
 この前の見送りの件もそうだけど、割と意地を張って譲らない。

 これは多分俺が折れるしかないか……
 ありがたく甘えるか。
津村 魁
津村 魁
ん、じゃあ……お邪魔します

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