秋汰と話をしていると、前の席に女子が座ってきた。
この女子って確か……名前なんだっけ。
まさか俺に話しかけてくるとは思っていなかったから、思わずキョドってしまった。
だってさ……印象いい訳ないじゃん。
マウントとるみたいな事したんだし……
苗字か……? まぁいいや、相手も別に俺の事嫌ってるわけじゃなさそうだし、とりあえず安心した。
花乃さんは「ケチー」といじけたように言って、他の席へと移ってしまった。
秋汰の事が好きなのかと思ってたけど、別にそういうわけじゃないのか……? 三ツ矢さんと同じで皆に優しいというか、そういうタイプなのかもな。
ふーん、と不意に窓の外を見ると、空は暗く雨が降っていた。
やべ、傘持ってきてたっけ? どーするか。
降り始めなのか、まだ幸いパラパラ降ってるくらいのレベルだし、今ならまだ傘がなくても大丈夫なはず。
10分くらい待っていると、小走りで秋汰が駆け寄ってきた。
まだ雨は小降りだ。
寒そうにしている秋汰があまりにも可哀想で、俺は着ていたカーディガンを脱いで、秋汰にそっと羽織らせた。
まぁ、でも……リアルな話すると、秋汰の家まで送って自分の家まで歩いてると、さすがに寒すぎて無理かもな……
秋汰が風邪ひくよりは全然いいけど……
そうしてだべっている間に、秋汰の家へと到着した。
エレベーターの暖房がすげぇ温かい……
そうこうしているうちに、秋汰の家の前まで着いた。
そして、エレベーターの方へと戻ろうとした瞬間……
秋汰は俺の腕を掴んで引き止めた。
秋汰の家に上がる……? でも、こんな遅い時間に、迷惑になりそうじゃね……家族もいるだろうし。
秋汰は掴んだ腕を離そうとしない。こうなった秋汰は割と頑固だ。
この前の見送りの件もそうだけど、割と意地を張って譲らない。
これは多分俺が折れるしかないか……
ありがたく甘えるか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。