あなたが予備の医務室に「収容」されてから、三日が過ぎた
その間、敦は毎日欠かさず食事を運び、そして毎日、腕や頬に新しい火傷を作って戻ってくる
事務机で包帯を巻き直す敦に、鏡花が不審そうな視線を向ける
新しく来たお客さんのところに行くたびに、敦がやけどを負って帰ってくる
何事だ、と思うのは当たり前だ
だけれど、何故?と聞いても敦ははぐらかすばかりで、何もわからなかった
社内ではあなたのことを、「難しいお客さん」としか知らされていないが、敦だけは知っていた
あの部屋にいる女性が、怒りで熱を発しているのではないこと
僕を、わざと傷つけようとしているわけではないこと
彼女は、自分を焼いているのだ
(……やっぱり、似ている)
太宰さんからは
『彼女の名はあなた 事情のある外部のお客さんだ
前のあなたさんはもう大丈夫だから、君は今の彼女に専念してくれたまえ』
と言われたが
(太宰さんは「別人だ」って言った。でも、僕の目が、鼻が、この直感が……)
同じ名前、同じ部屋、そして何より己の直感、それがすべて同一人物だと告げている
もし彼女が本人、つまりは敦が助けた人だとしたら、なぜ太宰さんはあんな嘘をつくのか
ただ、「あなたさんを看病してくれ」と言えばいいだけではないのか
なぜわざわざ、僕に彼女を別人として扱え、とでも言うような回りくどい行動をとるのか
その理由とは一体何なのか
そして何より、なぜ彼女は自分を「人殺しの爆弾」だと言って、自傷するように力を振るうのか。
その矛盾を抱えつつ、敦はあなたがいる部屋の扉を開けた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!