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第19話

十七話 なぜ?
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2026/02/01 20:15 更新


あなたが予備の医務室に「収容」されてから、三日が過ぎた



その間、敦は毎日欠かさず食事を運び、そして毎日、腕や頬に新しい火傷を作って戻ってくる


泉鏡花
……また怪我をしたの?


中島敦
あはは……鏡花ちゃん、心配しないで。これくらい、虎の再生能力ならすぐ治るから



事務机で包帯を巻き直す敦に、鏡花が不審そうな視線を向ける



新しく来たお客さんあなたのところに行くたびに、敦がやけどを負って帰ってくる



何事だ、と思うのは当たり前だ



だけれど、何故?と聞いても敦ははぐらかすばかりで、何もわからなかった










社内ではあなたのことを、「難しいお客さん」としか知らされていないが、敦だけは知っていた



あの部屋にいる女性が、怒りで熱を発しているのではないこと



僕を、わざと傷つけようとしているわけではないこと



彼女は、自分を焼いているのだ




















(……やっぱり、似ている)








 太宰さんからは



『彼女の名はあなた 事情のある外部のお客さんだ

前のあなたさんはもう大丈夫だから、君は今の彼女に専念してくれたまえ』



と言われたが








(太宰さんは「別人だ」って言った。でも、僕の目が、鼻が、この直感が……)










同じ名前、同じ部屋、そして何より己の直感、それがすべて同一人物だと告げている


















もし彼女が本人、つまりは敦が助けた人だとしたら、なぜ太宰さんはあんな嘘をつくのか




ただ、「あなたさんを看病してくれ」と言えばいいだけではないのか



なぜわざわざ、僕に彼女を別人として扱え、とでも言うような回りくどい行動をとるのか



その理由とは一体何なのか


















そして何より、なぜ彼女は自分を「人殺しの爆弾」だと言って、自傷するように力を振るうのか。



















その矛盾を抱えつつ、敦はあなたがいる部屋の扉を開けた







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