第5話

『Before Time Let Go』第二話: 観客席の向こう側
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2026/01/17 13:00 更新

誰もが眠りにつく夜中の闘技場。

かつてこの場所で行われた伝説の三大魔法学校対抗試合トライウィザード・トーナメント


二人の周りには深い闇が広がる。


寮を抜け出してこんなことをしていることがバレでもすれば、どんな事になってしまうだろう。

リスクへの恐ろしさを感じながらも、両親の反応を想像すると、少しの好奇心さえ湧いてくる。

スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
……本当に、やるの?
スコーピウスは、アルバスの手元を見つめながら言った。

小さくて、古びた金属の真ん中に回る砂時計がある。
慎重に扱うべきものだと、直感が告げている。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
見るだけだよ。介入しない。約束する。
アルバスはそう言って、逆転時計タイムターナーを握った。
その表情は、どこか子どもじみていて、同時に必死だった。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
父さん達が、僕たちと同じ年だった頃をさ……
ちょっと見に行くだけ。
スコーピウスは一瞬、父の顔を思い浮かべる。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
……少しだけだからね
自分が折れたことに、少し驚きながらそう言った。


アルバスはにっと笑い、
次の瞬間、世界が裏返った。




















 
耳鳴り
足元が消える感覚、そして__

轟音、歓声、熱気
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
……うわ
視界が開けた瞬間、スコーピウスは言葉を失った。

巨大な闘技場。
宙を舞う火花。
観客席を埋め尽くす魔法使いたち。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
成功だよ!
アルバスが小声で叫ぶ。
ルード・バグマン
ルード・バグマン
紳士、淑女のみなさん、少年、少女諸君。さてこれから始まるのは__もっとも偉大で__もっともすばらしい__しかも二つとない__一大試合、三大魔法学校対抗試合トライウィザード・トーナメント

会場中に響き渡る声とともに、割れるような大きな声援がそこら中から上がる。

二人はダームストラングのローブを身にまとい、その会場の迫力に圧倒されながら、応援に参加する。
黒と赤のローブに深く被ったフード
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
僕たち、完全に観客だね。
スコーピウスは思わず笑ってしまった。

危険なはずなのに、
胸が高鳴る。

闘技場では大きなドラゴンが吠える。
炎が空を裂く。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
見て、あれ!
アルバスが身を乗り出す。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
本で読んだ通りだ……!
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
行け行けクラム、行け行けクレイジー・クラム!
選手が続々と入場し、会場の空気は一層盛り上がる。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
私のすぐそばに立つなら、そんなに息を吹きかけないでいただきたいわ。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
*ローズ?ここで何してるの?
*ハーマイオニーとロンの長女。アルバスとスコーピウスと同い年。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
ローズって誰?それにあなたの発音、どうしてまともなの?
ハーマイオニーが二人を怪訝そうに見つめる。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
(なまりのある発音で)ズみまゼん、ハーマイオニー。こいつヴァ、人違いしたんだ。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
どうして私の名を知っているの?
ルード・バグマン
ルード・バグマン
さあて、早速始めましょう。最初の選手は__スウェーデンショート‐スナウト種のドラゴンと対戦です。セドリック・ディゴリー選手!
ハーマイオニーがドラゴンの咆哮に気に取られている間に、スコーピウスがアルバスの腕を引っ張り、その場を離れようとした。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
行こう、アルバス!
人混みをかき分けて走る。
歓声が遠ざかり、視界が揺れる。

その瞬間__逆転時計タイムターナーが、異様な熱を帯びた。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
……え?
金属が震え、
砂時計が、勝手に回り出す。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
スコーピウス、これ___
次の瞬間、衝撃がはしる。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
ご、ごめんなさい!
誰かに、ぶつかった。

スコーピウスはよろけ、
アルバスは前を歩いていたスコーピウスの背中にぶつかる。

手にしていたものが弾かれる感覚。
きらり、と光る。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
……っ!
逆転時計タイムターナーが、空を舞い、人波の向こうへ消えていった。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
ちょ、ちょっと待って!
声を上げるより早く、人混みに飲まれる。

目の前に立っていたのは、同じ年頃の少女だった。
深いブラウンの柔らかい髪。
困ったように揺れる瞳。
グリフィンドールの少女
グリフィンドールの少女
こちらこそ、ごめんなさい…大丈夫?
その声は、ひどく落ち着いていた。
グリフィンドールの少女
グリフィンドールの少女
怪我は……してない?
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
だ、大丈夫です……

スコーピウスは反射的に答えた。
アルバスが横で、何か言いかけて、飲み込む。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
ごめんなさい、急いでて
少女は少し笑った。
スコーピウスはその笑顔に理由もなく、懐かしさを感じた。
グリフィンドールの少女
グリフィンドールの少女
この辺、人が多いものね。気をつけて。
それだけ言って、彼女は去っていった。
__スコーピウスはその背中をぼんやりと眺めていた。
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
……ない
アルバスが呟く。
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
__え?
アルバス・セブルス・ポッター
アルバス・セブルス・ポッター
逆転時計タイムターナーが、ない
スコーピウスの喉が、ひくりと鳴った。
__未来に戻れないかもしれない

そう理解した瞬間、
指先から体温が奪われていくのを感じた。

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