僕がユウのタックルで全治3日になってユウは僕の傍を離れなくなった。
ふとユウの話を聞きながら思いを巡らす。
彼女と出会ったのは僕が魔法を自由自在に操れるようになった頃だった。
最初ミセス・コールから紹介された時は死んだ目をした女だった。
愛想はなくぼーっとしていて……僕には何かに怯えているようにも見えた。
リドルではなく頑なにトムと呼んでくるところは同じだが。
いつからだったか…そうだ、ユウが他の奴らに絡まれていてちょうど僕の機嫌が良くない時で八つ当たりで他の奴らをちょっと脅かしたら仲間を見つけたと思ったユウが不思議な力…いや、魔法を見せてきて僕も初めて同じ力(今思えばユウの力は僕のとは毛色が違うけど)を持つ人と出会って興奮していてそのまま仲良くなっていったんだった。
僕なんかに…特に愛想もなにも振りまかなかった当時の僕に誕生日は毎回プレゼントを寄越すし僕のお願いなら(リドル呼び以外は)何でも聞くし…
何でそこまでするのかと聞いたら「目が綺麗だから」だと。変人以外の何者でもないな。
落ち着いて考えてみれば僕も変だ。
なんでこんなやつとちょっと離れたらまるで目の前が真っ暗になったように感じるのだろう。
ユウの髪を触りたくなるのは何故だろう。
なんでユウの笑顔で胸が苦しくなる?
なんでユウの傍にいるやつが憎たらしくなる?
ユウの視線を受けるもの全てが憎らしくなる?
どうして、どうして僕は────
僕は、もしかして、もしかしてだがユウのこと──
疑問符は、彼女に対してはいらない。
~完~
でいいような気がしてきた
4/7修正
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!