第33話

言葉に出来なかった想い
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2026/04/08 03:31 更新
(なまえ)
あなた
…知ってる
小さくそう返して、視線を逸らす。

沈黙が、二人の間に落ちる。

何か言わなきゃいけないのに、
何を言えばいいか分からない。
(なまえ)
あなた
(このままじゃ、また終わる)
そう思った瞬間——

私は、ポケットに手を入れた。

取り出したのは、折りたたまれた一通の手紙。

少しだけ、くしゃっとしている。
(なまえ)
あなた
…これ
差し出す。

長尾謙杜は、一瞬驚いた顔をする。
長尾謙杜
長尾謙杜
なに?
(なまえ)
あなた
読めばわかる
それだけ言って、視線を合わせない。

本当は、今ここで全部言えたらよかった。

好きだったことも。
ずっと忘れられなかったことも。

でも——

言葉にしようとすると、全部崩れそうで。

だから、書いた。

逃げないように、ちゃんと残る形で。
長尾謙杜
長尾謙杜
…今、読んでいい?
一瞬、迷う。

でも、首を横に振る。
(なまえ)
あなた
…あとで
今ここで読まれたら、
その反応を見る勇気がない。
長尾謙杜
長尾謙杜
…そっか
少しだけ優しい声。

そのまま、彼は手紙を受け取る。

触れた指先が、ほんの一瞬だけ重なる。

それだけで、胸が締め付けられる。
(なまえ)
あなた
じゃあ
それ以上何も言えなくて、
私は背を向けた。
長尾謙杜
長尾謙杜
あなたの下の名前
呼ばれる。

でも——

振り返らない。
長尾謙杜
長尾謙杜
…ちゃんと読む
その声だけが、背中に届く。

歩きながら、涙が滲む。

これでいい。

これで、全部伝わる。

言えなかった想いも、
止まっていた時間も。

全部——あの手紙の中に。
(続く)

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