【いつからか】
なんて、もう覚えていない。
気づいた時には、もう手遅れだった。
無意識に姿を探してる。
その声に耳をそばだてている。
もう恋愛はしない。
と、決めたのはいつだっけ?
違うか。恋愛は【出来ない】が、正解か。
寂しさも、欲も、紛らわせる方法は知ってる。
都合のいい答えなんてのは簡単。
目の前の人物をその時だけ愛せばいい。
女でも男でも別に構わない。
心に空いた穴が埋まればいい。
只、それだけ。
だけど、その時だけ埋まる穴は
一瞬でさらに深く抉れて行く。
しかし底まで堕ちれば、そんな感情
どこかに捨て置いてしまう。
人間なんてそんなもの。
【唇にキスをしない】
と言った映画はなんだったっけ?
感情が、移って本気で恋してしまうからだと
それは、心を通わせる特別なものだと...
そんな記憶が、片隅にあって
こんな俺でも、唇にはキス出来ずにいた。
もう、恋愛なんで真っ平御免だ。
...そう思ったいたのに
気づいたら俺の心に住み付いていた。
負けず嫌いで、真っ直ぐで
頑張り屋で、生意気で...
稀に見せる笑顔が宝石のような...
乾いた笑い声は、宙を漂う。
人はは繰り返す。それはあまりにも愚かだと思う。
頭は理解していても、心は勝手に動き出す。
そう言ったドズさんの言葉。真っ直ぐな目。
そのお陰で前に進めた。
隣に並べるとは思わない。
愛してもらえるとも思わない。
只、その穢れない世界の片隅に
置いてもらえればそれでいい。
その世界で、存在感がなくても
困った時に手を差し伸べることのできる
無害のNPCにでもなれれば、それでいい。
だから、拒絶しないで欲しい。
拒絶されない自分でありたい。
そう思うのなら
やらなければない事がある。
自分の腐った世界を正すこと。
まぁ、みんな割り切った関係だから
そんな難しい事じゃない。
実際
おんりー以外いらない。
そう思った日から
刹那的な関係はプツリと途絶えた
それらの俺は、自分でも笑っちゃうほど
ピュアな恋愛をしてる。
おんりーの一挙手一投足に
踊らされて、喜んで
なんて、ボソリとドスさんに言ってみたり...
そんな俺を見たトズさんは
なんて言いだしたりして...
おんりーは、田舎からでてきて
都会なんて慣れてないでしょうし、未成年なんで
ぼんさんかちゃんと守ってあげてくださいね。
なんて、ドズさんに
それっぽいポジションを貰って...
そんな俺の隣で、おんりーは
文句を言いながらも離れず
稀に笑顔を見せる。
そうやって小さな幸せを噛みしめていた。
そんなポジションでいいと思ってた。
だけど、時間と言うものは残酷だね。
時が経つにつれて
と、言われる事が増えた。
そりゃそうだ。
いつまでも未成年じゃない。
若い分適応力だって高い。
そうなればお目付け役なんて、ウザイだけ。
そんな事わかっていても
側に居たい気持ちは大きくなる一方で...
なんだかんだと理由をつけてはおんりーを側に置いた。
おんりーはといえば、文句を言いながら
俺から離れず側にいるんもんだから
それがまた可愛いくて、愛おしくて仕方がない。
おんりーからすれば、習慣のようなもので
他意はないのだろうと理解っている。
それでも良かった。
おんりーの世界の片隅に
存在する事を許されているようだったから…
けれどあの時、あの飲み会でその世界は終わりを告げた。
俺の執念の賜物か
【ぼんじゅうるの隣にはおんりー】
という暗黙の了解がいつしか生まれていた。
だからこそ、当然だと思っていた。
イベントの打ち上げだった。
おんりーに悪い虫がつかないように
いつものように俺の横に座らせた。
暫く経つと、場も盛り上がり
席もシャッフルされていく。
そんな中、俺とおんりーの間を割って入ってきた女性がいた。
あー。コイツか。
俺もバカじゃない。
毎回、露骨にアピールされてれば
好意を寄せられてる事くらい理解できる。
こんなおじさん。どこがいいんだろうねぇ…
なんて思いながら、軽くいなしたところでお構い無しだ。
こういう女は苦手だ。
人の世界にお構いにし入ってくる。
割り切って付き合えない相手はイラナイ。
…数年前の俺でも願い下げのタイプ。
その女は酔ってしまったと、俺の腕に絡み付き
女性特有の武器を俺の腕に押し付けて甘える。
…やめてくれ。吐き気がする。
今もこれからも
俺は、おんりーにしか興味がないんだ。
優しく対応できているうちに消えて欲しい。
そう思っていた時だった。
おんりーはすくりと席を立った。
その唐突な行動に、慌てて声をかける
しかしおんりーから返ってきた言葉は
だった。
俺を冷淡な目で見下ろし
くだらない女の挑発に
『別に気にしていない』
と言葉を添えて、席を外した。
おんりーのその行動に、戸惑った。
最初の頃、それこそまだおんりーが未成年の頃は
側を離れる事が度々あった。
その度に、危ないから離れるなと
懇懇と言ったものだけども
ここ数年は離れる事などなかった。
こんなシチュエーションも無かったわけだけども…
気を使ったつもりなのだろうか?
それともタラシだと思ったのだろうか?
今すぐ追いかけて、俺の側に留めて置きたかったが
ガッツリホールドされ、すぐに追いかけられなかった。
こんな場所じゃなければ
スポンサーの親類じゃなけりゃ
こんな女、いなしてやるのに…
次におんりーに会えたのは
もう人もまばらいになったお開き後だった。
俺はおんりーの顔を見るや否や
と、久しぶりのワードを放った。
やはりそういう事が…
変な気を回したのだろう。
だけど俺は、そんな女ちっとも興味ないのよ。
そんな事より大事なこと。
おんりーの身の危険や、誑かす存在から
おんりーを遠ざける事。
そう伝えると
返ってくる言葉は大概同じ
必ず決まって『ガキじゃない』という。
そんなことはわかってる。
子供扱いなんてしていない。
俺は特別扱いをしているんだ。
…なんて言えるわけもなく
お酒に弱いおんりーを守るためだとか
それっぽいイイワケを並べる。
きっとそれが、おんりーには
口煩い先輩…いや、おじさんでしか無かったんだろう。
ずっと、何年も我慢していただけなのかしれない。
そう言い放ち、苛立ちを隠さなかった。
それでも、そんなおんりーに
いつもの事と
と、声をかけた。
不機嫌に塩対応をぶっ込んでくるだろうと
思っていたが、おんりーは微動だにしなかった。
それじゃあ、仕方がない。
いつまでも、ここにいるわけいもいかない。
そう思い。
と、おんりーの腕を掴んだ。
するとおんりーはキッとコチラ睨みつけ
と、大きな声と共に俺の腕を払った。
そして。コチラを振り向くともなく
会場を後にして行った。
いつもの拗ねた態度ではない。
もちろん塩対応なんかじゃない
この時、完全におんりーの世界から拒絶された。
この手を払われたのと同時に
おんりーの世界に俺の居場所は消えたのだ。
もうイラナイと排除されたのだ。
いや、最初からそんな場所はなかったのかもしれない。
あの日から世界の色が変わった。
いや、戻ったが正解なのかもしれない。
やっぱり俺には縁のない世界だったんだ。
タバコの量も増え
フラフラと夜遊びする事も増えた。
それでも刹那的な関係を持たなかったのは
なにか期待しているのか...
自分の諦めの悪さにほとほと嫌気がさす。
きっと、ドズさんだろう…
あの人は勘のいい人だから...
俺が口にしなくても、何かを察したんだう。
おらふくんはそう言ってケタケタと笑った。
もう、辛い思いはしたくないと
あれほど思っていたのに…
同じことを繰り返して、ホントなんなんだろうね…
なんて言えば
なんて、最もらしい事を言った。
要は、ストレス発散よね?
結局、今日も呑んだ。
酒にのまれる前に止められたのは
二人のおかげ…かな?
会計を済ませ、一人タバコを蒸しながら思う。
…呑み足りない。
そう思いなっがら、立ち上る煙に目を向けていると
私と、遊びません?
と言いながら、近づいて来た女。
目線だけで、そいつの顔を見る。
そこにいたのは聞き馴染みのある声。
最近飲みに行くバーのママだ。
ママと呼ばれるには、まだ若いやり手の店主だ。
はぁ?ネコおじは、何を言っちゃてる?
逆ナンっておらふくん。この人は…
と、言い出そうとした時だった。
おらふくんより少し遅く来たネコおじは
状況を上手く把握出来ず、
『あ。はい。』と、返事をすると
おらふくんに引きずられるように帰っていった。
なにか含むような言い方をしたその目は
ドズさんと少し似ていた。
そのまま、ママとBARに向かった。
扉を行けると、カウンターで1人泣いてる女性が居た。
と、豪快に泣きながら失恋を語り出した。
なんて言われ、他人の失恋話を聞く羽目になった。
要約するに
何年も付き合っていた彼氏がいたが
最近の行動から浮気を疑った。
問いただしたい所、認めはしたが逆ギレされたと。
思わず声が漏れた。
と、酒を煽りながら言った。
わかってたのになぁ...恋心は厄介だ。
理屈じゃない。気持ちを抑える程加速する。
なんて、相談に乗ってやったのか
乗ってもらったのか…
酒の所為もあって
その場限り奴とだと思えば饒舌にもなる。
そういうのは
...もう、やらないと決めたの。
...なんで決めたんだっけ?
それって今も意味あるんだっけ?
気持ち、一緒でしょ?
なんて言われて
たまには傷を舐め合うの悪くないか
なんて思ってしまったんだ。
目覚めると、もういい時間だったようで
と、刹那を過ごした女は帰り支度をしていた。
と、言った。
あまりにも昨日と違う雰囲気に、思わず質問を投げかける。
よく喋るやつ…
確かに変なやつだな。
体の関係はナシね。
ホント、手放せなくなっちゃいそうなほど良かったから。
と、ウインクして出ていく。
ボソリと呟くと、静けさが際立った。
誰も拾うことのないその言葉が妙に寂しくて
虚無感に襲われる。
あの頃より深く抉られる心に
愛の重さを知る。
こんなにもおんりーが自分の中で大きくなっていたとは…
あぁ、よりによって今日は出社ミーティングの日じゃん。
どんな顔しておんりーに会えばいいのよ。
とりあえず熱いシャワーを浴びよう。
そして考える。
この思いを忘れるには
この苦しみから開放されるには
やっぱり堕ちるとこまで堕ちるしかないのか?
答えが分からないまま
只、脳裏に浮かぶのは、宝石のような笑顔だった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!