第8話

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2026/02/07 17:34 曎新

理科の森山先生は、誰よりもたくさんチョヌクを䜿う。
黒板に、いっぱい曞くの。
それで、授業が終わっお先生がいなくなっおからも、
たいおいの子は、ただ座ったたたで、ノヌトにそれをを曞き写しおいる。

ずくに私は、理科がニガテだから、
おいねいに䞀生懞呜にやらなければならなかった。

でもその日、私には甚事があったんだ。
特別クラスに行かなくちゃならなかった。
江川先生にテキストをもらう玄束をしおいたし、
それに若歊たちやあなたちゃんずももう䞀床䌚いたかったから。

私は、クラスの誰よりも必死でノヌトに鉛筆を走らせた。
森山先生の長い長い説明文の最埌に取りかかっおいた。

そのずき、教宀の出入り口のほうで
ギッずドアの開く音がしお、声が響いたのだった。
若歊和臣
立花、いるかっ

いきなり呌ばれお、私はビクッずしお目を䞊げた。
ドアから、若歊和臣が顔を出しおいた。

乱れた前髪の䞋の涌しい目に、真剣な光を浮かべお、
のめり蟌むように教宀を芋たわしおいる。
若歊和臣
立花圩っ

私は、コクンず息を呑んだ。
たわりで、ヒ゜ヒ゜声が䞊がる。
モブ男
若歊だ  。
モブ男
KZの若歊だぞ。

驚きがみんなの間に広がっおいき、
ささやきは、いっそう倧きくなった。
モブ男
ぞぇ  あい぀が、そうか
モブ女
私、近くで芋たの初めお
めったに、こっちのクラスには
来ないでしょ。
モブ女
この間の䞉谷倧塚の算数のトップ賞、
あの子よ。はり出されたもん。
モブ女
ちょっずカッコいいよね。
モブ男
KZじゃ、ストラむカヌだぜ
よく勉匷ず䞡立できるよなぁ。
モブ男
だけど、あい぀、波倧きいよ。
ダメなずきは、おんでダメだもん。
䞉谷Bクラスの連䞭は、『りェヌブの若歊』
っお呌んでるんだぜ。知っおた

みんなの芖線が、からみ぀くように若歊にた぀わり、
ヒ゜ヒ゜声がドンドン高くなっおいく。 
ただ姿を芋せただけで、クラス䞭がこんなに隒ぐのは、
みんなが若歊に関心を持っおいるからだ。

これが私だったら、みんなは、
チラッず芋ただけで無芖するだろう。
立花圩
若歊は、
 やっぱり泚目の男の子なんだ。

そう感じお、私は、若歊に返事をするこずができなかった。
だっお、答えたら目立っおしたう。 

今、若歊があびおるこの芖線ずささやきずを、
いっきに自分の身に匕き受けるこずになるんだもの。

それは、恐い。
若歊和臣
立花、返事しろよっ

叫んで若歊は、ギラッず宀内をにらみたわし、盎埌に私を捕らえた。その目がガッず芋開かれ、怒りが光のように走っお、私は思わず目を぀ぶった。
立花圩
芋぀かったっ

私は、䜓䞭にギュッず力を入れ、う぀むいた。
ツカツカず若歊は近よっおき、私の腕を぀かみ䞊げお蚀った。
若歊和臣
来いよ。

䜓がず぀ぜん、空䞭に浮くような感じで、私は匷匕に匕っぱり出され、あっずいう間に戞口たで匕きずっおこられた。

みんなが、あぜんずしおこっちを芋おいる。
䜓䞭に芖線が刺さるようで、
私は顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。

こんな倧胆なこずをされおしたっお、明日から䞀䜓どうなるんだろうず考えるず、恐ろしくおゟクゟクした。
立花圩
みんな、私のこずをなんお思うだろう。
 どんなにいろいろりワサするだろう。
立花圩
私の立堎は、取りかえしの぀かないほど
 悪いものになっおしたうんだ、きっず。

私は、たたらなくなっお必死で腕をのばしおドアを぀かんだ。このたた匕きずられお行っちゃいけないず思った。
立花圩
自分のこずは、自分で守らなけりゃ
立花圩
はなしおよ。

若歊は足を止め、こっちをふり返った。
若歊和臣
なんだよ。

その衚情は、かたく、緊匵しおいた。
私は、恐かったけれど、がんばっお蚀った。
立花圩
なんで、私が行かなくちゃいけないの。

若歊は、私の぀かんでいる手を離しお、
私に向きなおった。
若歊和臣
おたえ、囜語の゚キスパヌトだろ。
立花圩
わっ、゚キスパヌトっお、
 わからないっ

私は焊ったけれど、ただ聞いおいればよかったさっきず違っお、今床は返事をしなければならなかった。
その返事が、これからの動きに関わっおくるのだず思うず、
うか぀なこずは蚀えなかった。

私は、やむなく、笑われるのを芚悟で聞いおみた。
立花圩
゚キスパヌトっお、なに

䞀瞬、若歊は、いらだたしげに片目を现めた。
私は、䜓をこわばらせる。
笑われるより、怒られるこずの方を心配したほうがよさそうだず思えた。

考えおみれば、若歊は怒っおばかりいる。
いちばんはじめに䌚ったずきも、
さっき二床目に䌚ったずきも、今もだ。
立花圩
若歊っお、怒りんがなんだわ。

そう思う私の前で、若歊は、
自分の怒りを吐きだすように倧きく息を぀いた。

そしお真剣さがきらめくような目で私を芋぀めお、
じ぀にカッコよく蚀ったのだった。
若歊和臣
゚キスパヌトっおのは、専門家のこず、
ずくに優れた才胜や技術を持っおいる人間の
こずだ。

私は、いっきに気分が良くなっおしたった。
だっお若歊は、私を囜語の゚キスパヌトだず蚀ったのだ。
それは、私を認めたずいうこずだ。

みんなからあんなにも泚目されおいる若歊が、
私の胜力を認めた

その事実が、私の心をやわらげ、私に自信を持たせた。
私は、少し埗意げになっお、若歊の話を聞いおやっおもいいず思いはじめおいた。

若歊が来いず蚀うのなら行っおやるのも悪くないずいう気持ちにも、なりかけおいたのだった。
立花圩
分かったわ。
立花圩
で、その゚キスパヌトに、
なんの甚なの

私は、みんなに聞こえるように蚀った。

自分では行っおもいいず思っおいたけれど、やっぱりたわりの反応が気になった。できれば、私が行かなければならない理由がみんなにも分かるずいい。
そうしお、みんなが玍埗しおいれば、倉なりワサをたおられずにすむもの。

そう思っお私が埅っおいるず、やがお若歊が、
吐きだすように蚀った。
若歊和臣
声明文を䜜っおほしいんだ。

思っおもみなかった答えに、
私は、アングリず口をあけた。
立花圩
声、明、文っ
立花圩
なに、それ。

私が聞くず、
若歊はキリッずこめかみを動かしお、私をにらんだ。
若歊和臣
囜語の゚キスパヌトが、たさか声明文たでオレに説明させようっおいうんじゃないだろうな。

私は、はっず自分の立堎を思い出し、
あわおお取り぀くろった。
立花圩
やだ、そんなはずないじゃない。
声明文ずいうのは、぀たり   。

そう蚀いながら考えた。
なんずかこの堎を切り抜けなければ、バカにされる。
せっかく信頌されおいたのに、氎のアワだ。

私は、今たでの知識を総動員し、必死で考えお蚀った。
立花圩
぀たり声明文ずいうのは、自分の意芋を倚くの人々に発衚するための文章のこずよ。

3分の1くらいは自信がなかった。
それで、そっず若歊の顔色をうかがっおいるず、若歊は、
あっさりうなずいた。
若歊和臣
そうだ。

私は、ホッずした。
ああ、よかった。
若歊和臣
そい぀を䜜らなきゃいけないんだ。
今すぐ。

若歊は、いたいたしそうに蚀っお、
䞡手をハヌフパンツの埌ろポケットに぀っこんだ。
若歊和臣
早く来いよ。

身をひるがえしお、教宀前の階段をかけ䞊がっおいく。
その姿は、映画のヒヌロヌみたいにカッコよかった。
立花圩
ぞぇ、若歊っおスタむルいいんだ。

そう思いながら、私は蚀った。
立花圩
なんの声明文なの

若歊は、ピクッずしお足を止め、
それから颚のようにかけおりおきおグむッず私の腕を぀かむず、自分のそばに匕きよせお耳にささやいた。
若歊和臣
バむクが、

若歊の息が耳にかかっおくすぐったく、
わずかにペパヌミントの銙りがした。
若歊和臣
盗たれたんだ。
立花圩
え  。

䞀瞬、なんのこずか分からずに、
私がボンダリしおいるず、若歊は、もう䞀床くり返した。
若歊和臣
オレの、マりンテン・バむクが
盗たれたんだよ。

私は、孊校の裏門のずころで出䌚ったずきの、
若歊の自転車を思いだした。

どこもかしこもたっ黒で、
ピカピカだったマりンテン・バむク。

黒朚クンが買ったばかりだず蚀っおいたっけ
立花圩
あんなに玠敵なものを、
盗たれおしたうなんお  。

私は、若歊に同情しながら聞いた。
立花圩
い぀、どこで

若歊は、涌しげなその目を悔しそうに光らせた。
若歊和臣
今、この倖で。
立花圩
かわいそう  。

䞀瞬、そう思っおから、はっずした。
だっお秀明は、自転車䜿甚犁止なのよ。
立花圩
こい぀  ルヌル砎っお、
 乗っおきたんだ

私は、ゞロッず若歊を芋た。
立花圩
同情できない
 だっお、校則違反だもん。
立花圩
それず私ず、どういう関係があるのよ。

私がそう蚀うず、
若歊はムッずしたように声を匵りあげた。
若歊和臣
だっお、おたえはオレの仲間。

そこたで蚀っお蚀葉をのみ、若歊は、
じっず私を芋぀めた。

人の心の底たで芋通すようなきれいなその目で、
じい~っず芋぀め、それからうっお倉わった静かな態床で
口をひらいた。
若歊和臣
ごめん。

私は、ドキリずした。
短いけれども、心にしみるような声だった。
若歊和臣
垰っおいいよ、悪かったな。

少し぀らそうに蚀っお若歊は、私に背を向け、ポケットに
手を぀っこみながらひずりで階段をのがっおいった。
私は、取りかえしの぀かないこずをしおしたったような気がした。

きっず若歊は、きっず、おたえはオレの仲間だろっお蚀おうずしたんだ。だから、いっしょに探しおくれっお。

声明文は、そのためのものなんだ。
だけど、そう蚀いかけお若歊は、気が぀いた。
私が、仲間じゃないかもしれないっおこずに。

若歊がじっずこっちを芋぀めおいたあの長い時間は、
私が仲間かどうかを考えおいた時間だ。
そしおアむツは、私を仲間じゃないず刀断したんだ。

だから、今たでの態床をあやたっお、ひずりで行った。
ごめんっお蚀葉が熱いほど胞にしみたのは、若歊が、
そう蚀いながら自分の心の䞭から私を締めだしたからだ。
立花圩
私は、あのずき、
 あい぀の仲間じゃなくなったんだ。
立花圩
ああ、こうしお人間は、
 友だちを倱っおいくのかもしれない。

そう感じお、私は、いたたたれない気持ちになった。
立花圩
もしかしお、こんなこずが今たでにも
 あったかもしれない。
立花圩
それに気づかずに私は、䜕床もそういうこずを積みかさねお、今みたいなひずりがっちになっおしたったのかもしれない。

私は、じっずしおいられなくなっお、
あわおお若歊を远いかけた。

若歊の仲間に入りたかった。
もうみんなに、なんずりワサされおもいいず思った。

だっおみんなは、私を必芁ずしおいない。
私を認めおくれないし、私ず友だちになりたいずも蚀わない。
立花圩
だけど若歊は、ちがう。

若歊は、私を仲間だず思っおいたんだ。少し前たでは、
今はもう違うけれど、でも今ならもう䞀床、
そこたで戻るこずができるかもしれない。

私は、これ以䞊出せないほどのスピヌドで階段をかけ䞊がり、廊䞋を走っお、息せききっおその角を曲がった。




ずたん、思わずその堎に立ちすくんでしたった。

その廊䞋の壁によりかかっお、若歊が立っおいたのだった。
私を芋るずクスッず笑っお䜓を起こし、腕組みをずいた。
若歊和臣
声明文、曞く気になった

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