安心していいよ。
信じてるから。
二つ目の溜まり場も難なく制圧し、三十分の移動を経てラストのところ。
すっかり気分が高揚しているらしいしのはちょっと楽しげだ。
アルケーが釘を刺すも、しのの様子は変わりそうになかった。
うるみやが何気ない素振りで寄ってくる。
れむのことを言おうか迷ったが、結局それだけ答えて小さく微笑みかけた。
ほっと肩を撫で下ろしたうるみやは朗らかな笑みを浮かべると、元の位置に戻る。
二つ目のところに行っても、おかしくなることはなかった。
だからもう大丈夫だろう。なにより、俺には大切な彼がついてるから。
ふいにアルケーがうるみやを見る。
うるみやはなんの躊躇もなく頷いた。
まさか、三つ目のところはうるみやが受け持つというのだろうか。
一番人数が多いんだし、さすがに無理じゃないか?
……これは何か策があるな。じゃあ、うるみやに任せるほうがいいか。
もともと答えを決めていたのか即答すると、見えてきた
最終目的地に素早く寄って行った。
先ほど同様しゃるろが戸を開ける。
二回の戦闘で完全にノっているうるみやは、軽い調子で言うと
早く殺るように俺たちに目で促す。
手近なやつを一気に五人殺れば、恐怖の色を浮かべていた。
アルケーを見るととっくに済ませている。
呑気に言ったうるみやの言う通りにすると、うるみやは黒の
肘近くまである手袋を右手に付ける。
するとアルケーが
と視界を塞がれる。
あんまり俺に見せたくない光景なのだろうと悟り、目を閉じる。
うるみやの声音が変わった。
見なくても、ある程度の距離があっても感じる威圧感。
手出しできるものはいないだろう。たとえ、彼に立ち向かえた“やつら”でさえも。
そばにいるアルケーも微動だにしてないようで、もしかしたら
こいつも目を閉じているのかもしれない。
少しの沈黙ののち、うるみやが聞いたことのない詠唱を始める。
言葉に含まれる脅威が、一ミリの動きも許さない。標的になっている
“やつら”は、お礼状に感じていることだろう。
うるみやの声が聞こえなくなった、刹那。
瞼を閉じていても、貫通してくるほど眩い光があたりを覆い尽くす。
本当に目を閉じているのか分からなくなるほど、眩しく鮮明だった。
耳鳴りがするくらい明るい光が数秒で収まり、静寂が訪れる。
畏怖が感じられる声で目を開けると、それはグロいとしか
いいようがないものだった。
軽い吐き気がする。
アルケーに気遣われながらもなんとか吐き気を収めると、
と返す。
壁に打ち付けられた人だったであろうものを、あまり言葉で表現したくはない。
速くなる心拍を意識して落ち着け、あたりを見回す。
壁一面に叩きつけられていた。
しかし、右を向いたときに目に入ったのは。
苦しそうに倒れているうるみやだった。
その右腕からは、手袋の隙間から血が流れている。
急いで駆け寄ろうとすれば、アルケーに肩を掴まれた。
振りほどこうとすると、さらに力を込められてどうしようもなくなる。
うるみやは今、どうなっているんだ。あいつの中では何が起きている。
それを知る術を、俺は持たない。たぶん反応的にアルケーも。
目には確かな光が灯っていて。けれど苦しそうだった
一番不安なのは、長い付き合いのアルケーだろうにこの落ち着きよう。
俺は何をしてるんだ。しっかりしなければ。
息を吐いて、頬をぱちんと叩く。
アルケーは驚いていたが、特に何も言ってくることはなかった。
うるみやは唸り声を上げている。仲の何かに抗っているんだろうか。
きっと負けてしまったら、俺たちは無事でいられないだろう。
信じている。うるみやは絶対に勝つと。
後方にいるしゃるろとしのもなにやら話しているが、近づく様子はない。
そのまま四人でうるみやを見守った。
どのくらい経っただろうか。
うるみやがはっと目を開けて飛び起きた。
声をかけるか迷っていたが、アルケーはうるみやの名を呼ぶ。
こちらを見たうるみやの瞳は、揺れていた。
掠れ、震える声で言ったうるみやの顔は青白い。
座ったまま何度か深呼吸を繰り返すと、肩の力が抜けて
顔色も良くなっていった。
うるみやは疲労を感じさせる表情で言い立ち上がる。
そこにアルケーが慌てて寄り、ふらりと倒れそうになったうるみやを
受け止めた。
離れようとするうるみやの左腕をつかみ、アルケーはしゃがむ。
睨まれたうるみやは躊躇いがちに背に乗った。
アルケーが立ち上がると、うるみやの右腕から血が滴る。
いてもたってもいられず駆け寄ると、疲れた笑みを向けられた。
胸が苦しくなる。
また、俺は何もできない。誰のためにも働けない。
負ぶられたうるみやの左手が、頬に触る。
いつもとは違う、優しい笑み。
笑みを深めたうるみやは、アルケーに背負われて車まで向かう。
一緒に車に乗った時には、右腕の血は止まっていた。
隣に座ったのをいいことに、せっかくなので聞いてみる。
けれど眠そうなうるみやの様子を見れば、反応はなくても
聞き返そうと思えなかった。
しばらくすると、安らかな寝息が聞こえてきた。
アンケ~
アンケート
後日談ほしい?
ほしいよん
98%
いらねえよん
2%
投票数: 44票
あ、まだこの話で完結ではないですからね?
恋愛裁判よかたですよね~猫さんの「Oh」がまじで好き
てか兄弟で捕まってんの尊。同じ牢獄にいるんかな?(そういう曲じゃないです












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!