第52話

リューココリーネ
182
2025/05/06 12:00 更新

安心していいよ。

信じてるから。

二つ目の溜まり場も難なく制圧し、三十分の移動を経てラストのところ。
何人いるかなー?

すっかり気分が高揚しているらしいしのはちょっと楽しげだ。
遊びじゃねえんだぞ

アルケーが釘を刺すも、しのの様子は変わりそうになかった。
…かなさん大丈夫か

うるみやが何気ない素振りで寄ってくる。
うん。大丈夫

れむのことを言おうか迷ったが、結局それだけ答えて小さく微笑みかけた。

ほっと肩を撫で下ろしたうるみやは朗らかな笑みを浮かべると、元の位置に戻る。

二つ目のところに行っても、おかしくなることはなかった。
だからもう大丈夫だろう。なにより、俺には大切な彼がついてるから。
……うるみや

ふいにアルケーがうるみやを見る。
するのか?

うるみやはなんの躊躇もなく頷いた。
もうしゃるとしのには伝えてあるしー…あ、かなめ。
“なんにんやりたい?”
え……

まさか、三つ目のところはうるみやが受け持つというのだろうか。
一番人数が多いんだし、さすがに無理じゃないか?
うるみやが一人ですんの?
そ。ちょっと、うるみやにも思うところがあって
それともかなさん暴れたい?

……これは何か策があるな。じゃあ、うるみやに任せるほうがいいか。
いや、もういいよ。でも…五人くらいは殺りたいかな
ん、りょーかい。あるさんは?
二人でいい

もともと答えを決めていたのか即答すると、見えてきた
最終目的地に素早く寄って行った。

先ほど同様しゃるろが戸を開ける。
はいはーい。こんちには~

二回の戦闘で完全にノっているうるみやは、軽い調子で言うと
早く殺るように俺たちに目で促す。

手近なやつを一気に五人殺れば、恐怖の色を浮かべていた。
アルケーを見るととっくに済ませている。
ほな下がって下がって~

呑気に言ったうるみやの言う通りにすると、うるみやは黒の
肘近くまである手袋を右手に付ける。

するとアルケーが
俺がいいっていうまで目ぇ開けんな

と視界を塞がれる。
おう…分かった

あんまり俺に見せたくない光景なのだろうと悟り、目を閉じる。
さてと……始めますか

うるみやの声音が変わった。

見なくても、ある程度の距離があっても感じる威圧感。
手出しできるものはいないだろう。たとえ、彼に立ち向かえた“やつら”でさえも。

そばにいるアルケーも微動だにしてないようで、もしかしたら
こいつも目を閉じているのかもしれない。

少しの沈黙ののち、うるみやが聞いたことのない詠唱を始める。

言葉に含まれる脅威が、一ミリの動きも許さない。標的になっている
“やつら”は、お礼状に感じていることだろう。

うるみやの声が聞こえなくなった、刹那。

瞼を閉じていても、貫通してくるほど眩い光があたりを覆い尽くす。

本当に目を閉じているのか分からなくなるほど、眩しく鮮明だった。

耳鳴りがするくらい明るい光が数秒で収まり、静寂が訪れる。
……いいぞ

畏怖が感じられる声で目を開けると、それはグロいとしか
いいようがないものだった。
っ……

軽い吐き気がする。
かなめ、あまり見ないほうがいい

アルケーに気遣われながらもなんとか吐き気を収めると、
いや…大丈夫

と返す。

壁に打ち付けられた人だったであろうものを、あまり言葉で表現したくはない。

速くなる心拍を意識して落ち着け、あたりを見回す。

壁一面に叩きつけられていた。

しかし、右を向いたときに目に入ったのは。
なっ……うるみや!

苦しそうに倒れているうるみやだった。

その右腕からは、手袋の隙間から血が流れている。

急いで駆け寄ろうとすれば、アルケーに肩を掴まれた。
かなめ、近づくな
な、なんで…!

振りほどこうとすると、さらに力を込められてどうしようもなくなる。
あいつに今近づいたら…最悪殺される
はっ……!?

うるみやは今、どうなっているんだ。あいつの中では何が起きている。

それを知る術を、俺は持たない。たぶん反応的にアルケーも。
あいつのあの技を一回見たことがあるが、忠告された
絶対に近づくな、と

目には確かな光が灯っていて。けれど苦しそうだった
詳しいことは分からないが、うるみやは殺してしまう危険性も
あると言っていたから絶対に近寄るな
……分かった

一番不安なのは、長い付き合いのアルケーだろうにこの落ち着きよう。

俺は何をしてるんだ。しっかりしなければ。

息を吐いて、頬をぱちんと叩く。

アルケーは驚いていたが、特に何も言ってくることはなかった。

うるみやは唸り声を上げている。仲の何かに抗っているんだろうか。
きっと負けてしまったら、俺たちは無事でいられないだろう。

信じている。うるみやは絶対に勝つと。

後方にいるしゃるろとしのもなにやら話しているが、近づく様子はない。

そのまま四人でうるみやを見守った。

どのくらい経っただろうか。

うるみやがはっと目を開けて飛び起きた。
…うるみや

声をかけるか迷っていたが、アルケーはうるみやの名を呼ぶ。
…………

こちらを見たうるみやの瞳は、揺れていた。
まだ…あかん。もちょっと待って

掠れ、震える声で言ったうるみやの顔は青白い。

座ったまま何度か深呼吸を繰り返すと、肩の力が抜けて
顔色も良くなっていった。
……ふう。おけ、大丈夫。…待たせたな

うるみやは疲労を感じさせる表情で言い立ち上がる。

そこにアルケーが慌てて寄り、ふらりと倒れそうになったうるみやを
受け止めた。
…っ、すまん

離れようとするうるみやの左腕をつかみ、アルケーはしゃがむ。
乗れ
は、でも…
いいから。歩けねえだろ

睨まれたうるみやは躊躇いがちに背に乗った。

アルケーが立ち上がると、うるみやの右腕から血が滴る。
う、うるみや

いてもたってもいられず駆け寄ると、疲れた笑みを向けられた。

胸が苦しくなる。

また、俺は何もできない。誰のためにも働けない。
…かなめ

負ぶられたうるみやの左手が、頬に触る。
これはうるみやの判断やで

いつもとは違う、優しい笑み。
…っごめ、いや、ありがとう

笑みを深めたうるみやは、アルケーに背負われて車まで向かう。

一緒に車に乗った時には、右腕の血は止まっていた。


ねえ、うるみや何したの?

隣に座ったのをいいことに、せっかくなので聞いてみる。

けれど眠そうなうるみやの様子を見れば、反応はなくても
聞き返そうと思えなかった。
かなめ何か言った?
ううん。なんでもないよ。おやすみ
……おやすみ

しばらくすると、安らかな寝息が聞こえてきた。

アンケ~

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あ、まだこの話で完結ではないですからね?

恋愛裁判よかたですよね~猫さんの「Oh」がまじで好き
てか兄弟で捕まってんの尊。同じ牢獄にいるんかな?(そういう曲じゃないです

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