ミナSide
少しずつ。
季節が動いていく。
私とももりんは相変わらずで。
仕事が終われば、
モモ「今日どっち?」
ミナ「ももりんとこ」
そんな会話をするのが、いつの間にか普通になっていた。
そして。
さーたんも。
相変わらずだった。
あのInstagramを。
たまに、見ている。
*
ある日。
仕事の合間。
チェヨン「サナオンニ、これ見て」
サナ「何?」
チェヨンがスマホを差し出す。
二人で何かを見ながら。
話してる。
私は少し離れたところで、ももりんとお菓子を食べていた。
モモ「みーたん、これ食べる?」
ミナ「何味?」
モモ「知らん」
ミナ「知らんのに食べてんの?」
モモ「美味しいで」
ミナ「じゃあ食べる」
一つ取って。
口に入れる。
ミナ「……何味?」
モモ「やろ?」
ミナ「分からん」
モモ「でも美味しいやろ?」
ミナ「うん」
そんな話をしている向こうで。
サナ「え、ここ?」
チェヨン「うん」
サナ「ほんまに?」
チェヨン「ほんま」
いつもより少し大きな声。
何となく。
そっちを見る。
ミナ「何?」
サナ「……長野」
ミナ「長野?」
チェヨン「今度、行くやん」
「ああ」
仕事の予定。
その話らしい。
でも。
さーたんの顔が。
何となく。
いつもと違った。
ミナ「長野がどうしたん?」
サナ「いや……」
チェヨンを見る。
チェヨンも。
さーたんを見る。
サナ「……何でもない」
ミナ「何それ」
サナ「ほんまに何でもないって」
そう言いながら。
さーたんが、もう一度スマホを見る。
「…………」
モモ「みーたん」
小さな声。
ミナ「ん?」
モモ「見るなって」
ミナ「見てへん」
モモ「めっちゃ見てる」
ミナ「気になるやん」
モモ「言わんって決めたやろ」
ミナ「言わへんよ」
モモ「顔」
ミナ「普通やし」
モモ「普通ちゃう」
「…………」
ちょっと。
笑いそうになる。
私。
昔のさーたんみたいや。
*
長野での仕事の日。
朝から。
みんなそれぞれの準備で忙しかった。
撮影。
収録。
移動。
また撮影。
気づけば。
一日があっという間に過ぎていく。
その途中。
さーたんが。
何度か。
周りを見ていた。
誰かを探してるような。
でも。
本人は。
何も言わない。
「…………」
だから。
私も。
何も聞かなかった。
*
仕事が一段落して。
移動の準備をしていたとき。
チェヨン「……サナオンニ」
サナ「ん?」
チェヨン「もう行ったって」
「…………」
さーたんの手が。
止まった。
サナ「……そっか」
それだけ。
チェヨン「うん」
サナ「しゃーないな」
笑ってる。
いつもの。
さーたん。
でも。
その笑顔が。
ほんの少しだけ。
残念そうに見えた。
「…………」
私は。
ももりんを見る。
ももりんも。
私を見る。
何も言わない。
ただ。
目だけで。
同じことを考えてるのが分かった。
*
帰りの車。
サナ「惜しかったなー」
チェヨン「ほんとにね」
サナ「タイミング悪すぎやろ」
チェヨン「またいつか会えるよ」
サナ「まあな」
「…………」
ミナ「誰に?」
聞いてから。
ももりんが。
私の腕をつねった。
ミナ「痛っ」
モモ「何でもない」
サナ「何してんの二人🤣」
ミナ「ももりんがつねった」
モモ「みーたんが余計なこと聞くから」
サナ「……あ」
さーたんが。
こっちを見る。
サナ「そういうこと?」
ミナ「何が?」
サナ「最近二人して、うちのこと変な目で見てたん」
モモ「見てへん」
サナ「見てた!」
ミナ「ももりんは見てへん」
モモ「みーたんは見てた」
ミナ「裏切った」
モモ「ごめん🤣」
サナ「ほら!」
笑い声が。
車の中に広がる。
少しして。
さーたんが窓の外を見る。
サナ「……会ってみたかっただけ」
「…………」
誰も。
すぐには返さなかった。
サナ「何、その間!」
チェヨン「いや、別に」
サナ「絶対何か思ったやろ!」
ミナ「何も」
サナ「みーたんが一番怪しい」
ミナ「ほんまに何も思ってへんよ」
サナ「嘘や」
ミナ「ただ」
少し迷って。
やめた。
ミナ「……また会えるんちゃう?」
「…………」
さーたんが。
私を見る。
サナ「……そうかな」
ミナ「うん」
チェヨン「私もそう思う」
サナ「何その二人」
チェヨン「何が?」
サナ「知らんけど」
少し笑って。
また。
窓の外を見る。
*
その日の夜。
ホテル。
ももりんの部屋。
ベッドに並んで寝転がりながら。
今日のことを話していた。
モモ「危なかったな」
ミナ「何が?」
モモ「みーたん、絶対言いそうやった」
ミナ「何を?」
モモ「“その人ってInstagramの人?”って」
「…………」
ミナ「ちょっと思った」
モモ「やっぱり」
ミナ「でも言わんかったやん」
モモ「えらい」
ミナ「子どもちゃうねん」
ももりんが笑う。
「…………」
しばらくして。
モモ「でも」
ミナ「ん?」
モモ「ほんまに昔の私らみたいやな」
「…………」
今度は。
私が笑った。
ミナ「やろ?」
モモ「うん」
ミナ「さーたん、全然分かってへんけど」
モモ「私らも分かってへんかったやん」
ミナ「ももりんは特に」
モモ「みーたんもやろ」
ミナ「私は途中から分かってた」
モモ「私も途中から分かってた」
ミナ「逃げたけど」
モモ「それ言う?」
ミナ「事実やん」
モモ「……もう逃げへんもん」
声が。
少しだけ変わった。
私は。
ももりんを見る。
目が合う。
ミナ「知ってる」
「…………」
ももりんの手が。
私の手を探す。
指が。
絡む。
モモ「みーたんがおるから」
ミナ「うん」
少しだけ。
近づく。
それだけで。
十分だった。
*
翌朝。
廊下で。
さーたんと会った。
サナ「おはよ」
ミナ「おはよ」
サナ「ももりんは?」
ミナ「まだ準備してる」
サナ「遅っ」
ミナ「さーたんが早いねん」
サナ「みーたんもやろ」
並んで。
エレベーターを待つ。
「…………」
さーたんが。
スマホを見る。
一瞬。
見えた。
あのInstagram。
「…………」
やっぱり。
そうなんや。
でも。
言わない。
エレベーターが来る。
扉が開く。
サナ「みーたん」
ミナ「ん?」
サナ「昨日さ」
少しだけ。
間。
サナ「ほんまに、また会えると思う?」
「…………」
ミナ「うん」
サナ「何で?」
ミナ「分からん」
サナ「何それ🤣」
ミナ「でも」
エレベーターに乗る。
扉が閉まり始める。
私は。
さーたんを見る。
ミナ「会いたいって思ってるなら、いつか会えるんちゃう?」
「…………」
さーたんは。
少しだけ。
笑った。
サナ「……そっか」
ミナ「うん」
まだ。
恋じゃないのかもしれない。
ただ。
写真が好きで。
気になって。
一度。
会ってみたいだけ。
それでも。
昨日。
すれ違って。
会えなかったことを。
少しだけ残念そうにしていた。
「…………」
その気持ちに。
今はまだ。
名前なんて。
なくていい。
だって。
私たちだって。
そうだったから。
気づけば。
いつも隣にいて。
その意味を知ったのは。
ずっと。
あとのことだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!