シーザーくんの話を聞いていて、ちょっと気になったところ。荒れに荒れていたらしいシーザーくんを、見ず知らずの人が変えたなんて、にわかには信じ難いし、興味がある。
その言葉に、ついキョトンとする。分からないって……そんなに前の話でもないだろうに。
そう言っておかしそうに笑うシーザーくんの顔は、すごく愛おしそうに見えた。顔も名前も知らない人だけど、きっとその人は、シーザーくんにとって、かけがえのない存在なのだろう。何せ、自分の人生を変えた人なのだから。
咄嗟に出た言葉だった。彼を助けてくれた人の話をするシーザーくんは、すごく楽しそうで、すごく幸せそうだと。そう思ったのだ。
「素敵な思い出なんだね」と言って微笑みかけると、シーザーくんは驚いて見開いていた目を、ふっと軽く細めた。
しみじみとそういう彼の姿は、なんだか心を打たれるものがあった。こんなに人の心に残れるなんて、なんだか少し羨ましい気もしてしまう。
何かを呟いた気がして聞き返したけれど、何も言っていなかったらしい。幻聴かな……??疲れてる……??
まぁいいや。今はそんなこと(幻聴をそんなことっていうのもなんだが)より、目一杯この瞬間を楽しもう。
張り切るシーザーくんに腕を引かれ、私たちは再び歩き始めた。
先程の言葉を自分の中で反芻し、言葉の在り来りさと、それを伝えられない意気地無しな自分に、シーザーは小さくため息をついた。
「______君に出逢うことが出来たのだから」













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!