今回の甘々度:☆☆★★★
最初は、本当に普通だった。
ナイトレイブンカレッジなんていう、
問題児しかいないような場所に放り込まれて。
毎日トラブルに巻き込まれて。
その中で唯一俺と巻き込まれた仲間一人。
それだけ。
別に特別じゃなかった。
……いや。
今思えば、その時から特別だったのかもしれない。
聞き慣れた声がする。
振り返ると、向こうから手を振りながら
駆け寄ってくる姿が見えた。
思わず笑う。
全然大丈夫そうじゃない。
案の定、足をもつれさせる。
慌てて腕を掴む。
転ぶ寸前で体勢を支えると、ほっと息が漏れた。
本当に。
コイツは放っておけない。
中庭のベンチに並んで座る。
昼休み。
穏やかな時間。
楽しそうに話す声を聞きながら、相槌を打つ。
たぶん。
周りから見れば普通の光景なんだと思う。
友達同士。
それだけ。
でも。
最近は違った。
話しているだけで楽しい。
笑っている顔を見るだけで安心する。
目が合うと少しだけ緊張する。
……友達相手にこんなこと思うか?
答えはわかっていた。
ずっと前から。
声に我に返る。
苦笑する。
本当は。
考えていたのは目の前の人のことだった。
放課後。
オンボロ寮へ戻ろうとした時。
ふと校舎の窓から外が見えた。
中庭の隅。
見慣れた姿がある。
けれど。
一人じゃなかった。
男子生徒と話している。
楽しそうに笑っている。
その光景を見た瞬間。
胸の奥が妙にざわついた。
思わず呟く。
別におかしいことじゃない。
友達と話しているだけ。
それなのに。
なんだか面白くなかった。
その日の帰り道。
偶然を装うことすらできなかった。
見つかった。
向こうが先だった。
自然と隣を歩く。
いつも通り。
……のはずなのに。
今日は妙に落ち着かない。
つい聞いてしまった。
即座に思い出したらしい。
短く返す。
すると。
不思議そうな顔でこちらを見る。
ギクリとした。
鋭い。
いや、たぶん俺がわかりやすすぎるだけか。
少しの沈黙。
夕焼けが道を赤く染めている。
その中で。
ぽつりと声が落ちた。
正直に言った瞬間、自分でも驚いた。
こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
でも。
一度口に出したら止まらなかった。
足を止める。
相手も立ち止まった。
夕陽が瞳に映る。
きれいだと思った。
そして。
その瞬間に確信する。
胸の奥にあった答え。
ずっと認めてなかっただけ。
言ってしまった。
顔が熱い。
たぶん今、めちゃくちゃ赤い。
でも。
不思議と後悔はなかった。
しばらく沈黙が続く。
やっぱり急すぎたか。
そう思った時。
小さな声が聞こえた。
一瞬。
思考が止まる。
照れたように笑う顔。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥がいっぱいになる。
嬉しい。
たぶん今までで一番。
少し照れ隠しみたいに言う。
すると。
隣から小さな笑い声がした。
その返事が妙に嬉しくて。
並んで歩き出す。
触れそうで触れない距離。
だけど。
さっきまでとは違う。
これからはきっと。
少しずつ。
もっと近くなっていく。
そんな予感がした。
【たぶん、もう友達じゃない。】Yuken Enma














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!