翌日。
李玖「おはようございます〜」
李玖は眠たそうに目をこすりながら教室へ入る。
李玖「……あ」
また空いてる席は、温世の隣だった。
李玖「お、おはよう」
李玖がニコッと笑う。
温世は教科書から目を離さず、
温世「……おはよ」
ぼそっと返してくれた。
(返事してくれた!)
李玖は少し嬉しくなって席に座る。
講義が始まる。
先生が黒板にどんどん書き始める中、李玖は必死にノートを取っていた。
李玖「うぅ……早い」
小さく呟いたその時。
コツ。
机の上に、1枚のルーズリーフが置かれた。
李玖「え?」
見ると、綺麗な字で授業の内容がまとめられている。
李玖は隣を見る。
温世は前を向いたまま、何事もなかったようにノートを書いていた。
(もしかして………)
休憩時間。
李玖「これ……」
李玖はルーズリーフを差し出した。
李玖「ありがとう」
温世はちらっと李玖を見る。
温世「……写せ」
李玖「え?」
温世「先生の話、途中から追いつけてなかったやろ」
李玖は目を丸くした。
李玖「見てたの?」
温世「……たまたま」
李玖「ありがとう!」
李玖が満面の笑みを向けると、温世は少しだけ視線を逸らす。
温世「……声でかいわ」
李玖「ご、ごめん」
李玖は慌てて口を押さえた。
その様子を見ていた後ろの席の友達が、小声で話し始める。
「え、温世が人にノート貸した?」
「初めて見た」
「しかも自分から?」
温世はその声が聞こえると、じろっと振り返った。
温世「うるさいわ」
「はいはい」
友達は笑いながら肩をすくめる。
放課後。
李玖「じゃあまたね〜!」
李玖は友達と別れて校門へ向かう。
その途中、バッグの中を探りながら歩いていると、
「……危ないわ」
グイッ
誰かに腕を引かれた。
李玖「わっ!」
次の瞬間、自転車が目の前を勢いよく通り過ぎる。
「前見て歩け」
聞き覚えのある低い声。
李玖「温世くん……」
温世はすぐに手を離した。
温世「怪我したらめんどいんやけど」
李玖「助けてくれたんだ」
温世「………たまたま」
そう言って背中を向けて歩き出す。
李玖はその後ろ姿を見つめ、ふわっと笑った。
李玖「優しい人なんだね」
その言葉は、小さすぎて温世には届かなかった。
けれど、少しずつ。
2人の距離は、気づかないうちに縮まり始めていた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。