菅原side
ある日の夜、勇気を振り絞ってあなたにLI○Eでデートに誘うと、即既読が付いた。
(うおぉ、まじか…
返事待っててくれてた、とか?)
情けないことに、俺は数分前までのやりとりを一度切り上げ、どうデートに誘うかを悩んでいた。
_ピロンッ
スマホが軽快な音を立てる。
覗き込むと。
『私もスガ先輩と二人で行きたいと思ってたんです!デートですね♡』
あのあなたから!
ハート⁉︎
しかも『二人で』って…
普段は俺が誘うと、皆も誘いましょう!なんて満面の笑みで言ってくるあなたが⁉︎
(…やっと意識してくれた、とか?)
そんな考えが頭に浮かぶが、振り払う。
言っていて虚しくなってくるが、事実だ。
でももし本当だったら…
込み上げてくる気持ちが抑えられない。
思わずニヤニヤしてしまい、我にかえる。
(俺の部屋なんだから誰もいないっての)
本当にあなたのことになると、俺は浮つく。
あなたの言葉一つ一つで喜んだり、悲しんだり、幸せになれたり。
(ああ、俺_)
(そうだった…!)
すっかり忘れていた。
事の顛末を話すと、大地はニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んできた。
その日は結局、勉強の話は俺も大地も忘れて、母さんに声を掛けられるまであなたとのデートの話をしていたのだった。←
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!