〈飛side〉
病院へ向かう道すがら、アスファルトの裂け目から顔を出しているたんぽぽが目に入った。
ふと、この前ワスレナグサを渡した時の、あの笑顔を思い出す。
迷わずそれを摘み取ると、背中のバクがケケッと笑った。
病室のドアをノックする。中から「どうぞ」という静かな声が聞こえた。
中に入ると、あなたの下の名前は窓辺で画用紙に向かっていた。真剣な横顔に、少しだけ声をかけるのを躊躇う。
あなたの下の名前が顔を上げ、花を見て小さく目を見開いた。
あなたの下の名前が花瓶に花を挿す間、僕はなんとなく机の上に置かれた画用紙に目をやった。
そこには、窓から見える風景にそっくりの空と道路が描かれていた。
あなたの下の名前は慌ててそれを隠そうとした。けれど、僕にはその絵が、ひどく綺麗に見えた。
僕が正直な感想を口にすると、あなたの下の名前はきょとんと目を瞬かせ、やがて頬を染めて笑った。
その笑顔を見た瞬間、肺の奥がぐわっと熱くなった。
今までは何も感じなかった病室というものが、彼女の笑顔で急に体温を持っていくような感覚。心が、暖かくなっていく。
僕は照れ隠しに背中のバクを軽く叩くと、丸椅子を引き寄せて座った。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。