IAM side
今日は珍しく午前オフ
シューズもボロボロになってきたから
買い換えようかなと思って出かける準備をする
まだ誰も起きてない宿舎には静寂が響いてる
玄関で服を整えていると聞き慣れた声が僕を訪ねた
Kひょん、最年長で頼りがいがあり
弟思いの彼は真っ直ぐに愛情を注いでくれる
自身もデビューできるかも定かでない状況なのに
僕や周りの練習生の相談を快く受けて
嫌な顔せず一緒に解決法を探してくれる
Kひょんはアーティストとしても人としても
とても尊敬できる僕の大好きな人の1人だ
宿舎を出ると暑い日差しが
青々とした木々のすき間から僕を照らす
まだ朝だというのに照りつけられた地面には
陽炎が揺らいでいた
" 俺等の季節だ " と言わんばかりに
騒ぐセミの声を聴きながら靴屋に向かい歩き始めた
靴屋に着くと展示されている靴には目もくれず
目当てのシューズをさっと取り会計を済ませる
店にいた時間は10分もないと思う
そもそも僕は物欲がない上に
1つ気に入ったものは飽きるまで永遠に使い続ける性分で
お陰で余計なものを買うといった経験はない
そそくさと店を出て会社へ向かう
なんの変哲もないいつもの街を眺めていると
大きな十字路で重そうな荷物をもっている
お年の召した婦人がいた
会社へはこの十字路を真っ直ぐ行くけど
御婦人が大変そうなのにいてもたってもいられなくて
僕は気がつけば声をかけた
そう言って荷物を持ち横断歩道を一緒に渡る
そう言って手に握らされたのはみかん
そう言って一瞥する
手元に残ったみかんをじっと見つめふと考える
" 今までの僕だったら声もかけれなかったかもしれない "
でも今の場所でたくさんの人間性を知ったからこそ
優しさを教えてくれたからこそ
僕はこうして行動したのかな何て考えると心がぽかぽかする
少し恥ずかしくなって
このみかんはみんなで食べようなんて考える
感傷に浸っていると信号が青になっていた
横断歩道を半分渡った頃青色が点滅し始めて急いで走った
" あ と 1 m " そう思った時、
左耳に大きなクラクション音が突き刺さった
音の方を見た時には
僕の視界は"白く光沢のあるなにか"だけがあって
その瞬間大きな衝撃と痛みとともに
体が吹っ飛び地面に打ち付けられる
少し瞬きをしただけなのに
目の前からトラックが押し寄せて
身体を油圧されるような強い痛みが僕の足を襲った
筋肉がえぐれる様な
鋭利な物が足中に刺さるような
体験したこともない痛みに悶えながら
だんだん閉じかかってきた目を必死になってを開く
薄っすらと見える視界には
90 ゚ 回転した十字路、
煙が上がっているトラック、
潰れたみかん、
そして陽炎が揺れていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!