赤い線を越えたあと。
部屋は、相変わらず静かだった。
変わったのは――あなたのほうだ。
冗談めかした声。
けれど、否定はしない。
壁の時計が、ぎ、と音を立てた。
止まっていたはずの針が、ほんの少しだけ動く。
部屋の奥の扉が、ひとりでに軋む。
隙間から、赤い光。
即答。
その言葉に、少しだけ救われる。
深く、息を吸う。
言ってから、後悔した。
でも、もう遅い。
笑わない。
彼が黙るのは、珍しい。
一歩、近づく。
確かに。
床は、冷たくて。
足の裏に、ちゃんと感触がある。
低い声。
扉の光が、少し弱まる。
急かされていない。
一瞬。
空気が、張りつめる。
言葉を選んでいる。
珍しく。
胸が、きゅっと縮む。
すぐ、続く
視線が、逸れない。
短く、断言。
心臓が、どくんと鳴った。
彼は、扉の前に立つ。
取っ手には、触れない。
即答。
HAHAHA!!
いつもの笑い。
でも。
その声は、少しだけ低くて。
私は、扉に手をかけた。
冷たい。
でも、震えてはいない。
扉が、開く。
赤い光の向こう。
まだ知らない場所。
――それでも。
背後に、気配がある。
それだけで、足は前に出た。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。