第56話

蝶屋敷
21,954
2019/09/20 20:46


鬼殺隊士
ここらしいぜ、例の隊士。
鬼殺隊士
捕まったってのは本当だったんだな。
鬼殺隊士
そうみたいだな。なんせ柱が直々に向かって連行したんだからな。
鬼殺隊士
水柱様が抱えてこの屋敷に…
部屋の外から聞こえる、私の話。
あまりの声の大きさと喧しさに、流石に目を覚ました。

周りを見渡しても、私が横になるベッドが1つあるだけで、特に目立つ物は無かった。

刀が無いのは勿論、服装さえも等間隔にボタンがついた白い患者服に変わっていた。

私は「はぁ…」と1つ大きなため息をつく。


(柱を相手に逃げ切れる訳がありませんよね…仕方ないです。)


上半身を起こし、部屋の外で繰り広げられる私の話に対しても特に思うことも無いまま、布団が掛けられた足先を見ていたりする。
こんな所で何してるんですか?!この部屋には近づかないように言ったはずです!
鬼殺隊士
うっ…す、すみません。
鬼殺隊士
さっさと行くぞ…
鬼殺隊士
そうだな。
『バタバタバタ…』

はきはきした女の子の声が聞こえた直後に、慌てて立ち去る複数の足音がする。
それはどんどん遠ざかり、消えていってしまった。
全く…
そう言いながら部屋に入って来たのは、髪を左右で2つに結んだ女の子だった。
耳より高い位置で結んだ髪が大きく揺れ、手には手拭いと水の入った桶を持っていた。
隊服の上に真っ白な看護服を重ね、腰元で細く白い帯で締めるリボンが少し可愛い。

深い青の瞳と、切り揃えられた髪先が印象的だった。
あなた

起きたんですね、身体はどうですか?
あなた

えっ…と、そうです、ね。

肩の開いた傷口にそっと手を触れるが、痛みは殆ど無かった。
あなた

だ、大丈夫みたいです…痛みもありません。

そうですか。
はきはきした物言いと、きびきびと動く彼女に、私はつい見惚れてしまった。
…なんですか?
あなた

あ、いえ、何でも…無いです。

(ここはいったい、何処なのでしょうか…?)


私は慌てて彼女から視線を離し、改めて周りを見渡して見る。
…逃げられませんよ。
あなた

へ、

ここは蟲柱・胡蝶しのぶ様の私邸、蝶屋敷です。
あなた

蝶…屋敷…

私達はここで怪我をした隊士の看護をしています。
彼女は私に「目を瞑って下さい」と言い、私が目を瞑ると濡らした手拭いで優しく顔を拭いてくれた。
貴方、危なかったんですよ。後少しでも
治療が遅れていたら、腕に後遺症が残っていたかもしれなかったんですからね。
あなた

ど、どれぐらい私は…

3日程です。
あなた

あの…炭治郎さん方は…?

貴方の事を凄く心配していましたよ。夜になれば確実に会えると思いますが。

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