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部屋の外から聞こえる、私の話。
あまりの声の大きさと喧しさに、流石に目を覚ました。
周りを見渡しても、私が横になるベッドが1つあるだけで、特に目立つ物は無かった。
刀が無いのは勿論、服装さえも等間隔にボタンがついた白い患者服に変わっていた。
私は「はぁ…」と1つ大きなため息をつく。
(柱を相手に逃げ切れる訳がありませんよね…仕方ないです。)
上半身を起こし、部屋の外で繰り広げられる私の話に対しても特に思うことも無いまま、布団が掛けられた足先を見ていたりする。
『バタバタバタ…』
はきはきした女の子の声が聞こえた直後に、慌てて立ち去る複数の足音がする。
それはどんどん遠ざかり、消えていってしまった。
そう言いながら部屋に入って来たのは、髪を左右で2つに結んだ女の子だった。
耳より高い位置で結んだ髪が大きく揺れ、手には手拭いと水の入った桶を持っていた。
隊服の上に真っ白な看護服を重ね、腰元で細く白い帯で締めるリボンが少し可愛い。
深い青の瞳と、切り揃えられた髪先が印象的だった。
肩の開いた傷口にそっと手を触れるが、痛みは殆ど無かった。
はきはきした物言いと、きびきびと動く彼女に、私はつい見惚れてしまった。
(ここはいったい、何処なのでしょうか…?)
私は慌てて彼女から視線を離し、改めて周りを見渡して見る。
彼女は私に「目を瞑って下さい」と言い、私が目を瞑ると濡らした手拭いで優しく顔を拭いてくれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!