前の話
一覧へ
次の話

第1話

#1
1,334
2024/11/19 10:07 更新










      「さっさと三軒目ぇ行くぞぉ」





      「早く行こーよ?ホテル♡」





    「ねぇねぇ、そこの女の子、今暇?」









あなた





ざわざわとした街。

人がごった返している広い道は

お店から漏れ出てくる光で照らされている。

飲み屋や風俗店などが多く、

甘ったるい香水の匂いと苦いタバコの匂いが鼻に残る。

酒に溺れて酔いに酔っている中年男性達、

いかにもホストの格好をしている男と腕を絡ませ

ホテル街へと入っていく女、

地雷系の格好をした女にナンパをしている男。

どこからどう見てもこの場所は治安が悪い。

言うならば"夜の街"。

欲に溺れまくっている大人達が集う場所。




あなた
…ッゴホッゴホ、





そんな場所にいる私は、

大人ではなく未成年。

高校1年生の16歳だ。

家庭で色々あり、訳あってここにいる。










冬の冷たい風が肌を刺激する。

もうどのくらいの時間ここにいるだろうか。

スマホの待ち受けには「23:15」と表示されており、

まだ1時間しか経っていないことに驚く。

寒さもあってか、時間が経つのが遅く感じる。

私が今いるのは、そんな夜の街






の、路地裏だ。





建物の配管が目立つ路地裏。

路地裏に灯なんてものは無い為、

目が慣れるまではほぼ何も見えないほどの暗さだった。

ずっと立っていたら疲れてきてしまった為、

ひんやりとしたアスファルトの地面に

膝を抱え込んで座っている。




あなた
…ッ、





今すぐにでも泣き叫びたい。

けれど、そんな気持ちとは裏腹に、

もうとっくに声を出す力など寒さに奪われていた。

寒さのせいで体がブルブルと震える。

寒いはずなのに体は熱くて。

そんな気持ち悪い感覚が不快でしかない。










コツッコツッ










誰かの足音が少し遠くから聞こえてくる。

遠く、というより、路地裏の奥からだ。

けれど、そんなことに構っていられるほどの余裕は

私の体には無い。

どうしようもできない無力感。

行くあてもなくてここに座り込んでいるが、

この寒さだ。

明日の朝、生きているのかどうかさえ分からない。










コツッコツッコツッ











恐らく2、3人いるだろう。

足音がいくつかある。

どんどんこちらへ音が近づいてくるが、

倦怠感のせいで顔を上げることすらしんどく、

誰なのかすら把握できない。

そもそも路地裏の奥から出てくる人、という時点で

怪しすぎる。

もしこちらに来たら何をされるか分からない恐怖と、

もういっそどうにでもなってしまえという気持ち。

…もう考えることすらしんどくなってくる。










コツッ_









あなた
…、?





音が消えた。

消えた、よりも止まった、の方が正しいだろうか。

悲鳴をあげている私の体には

もう気配を感じ取る力は無いらしく。









あなた
…ッヒュ、





顔を上げると目の前に人が3人立っていた。

暗くてハッキリと顔は見えないが、

恐らく男性2人と女性1人。




あなた
ッ、ぁ、





「来ないで」、そう声に出そうとしても、

喉からしぼりだされたのはか細い声。




…どうします?_さん





そう声に出す、背の高い男性。

その言葉が何の意味を含んでいるのか私には分からず、

ただこの現状に怯えていることしかできない。

最後に誰かの名前を言っていたが、

ハッキリと聞こえなかった為それも分からず。








…君、




あなた
ッぅぁ、ッ
うわ、泣かせた〜
うるせぇ













…で、君、
迷子?
…迷子なら、…危ないから早く家帰った方がいいよ
あなた





「迷子なんかではない」、

首を振ってそう伝える。




…家、帰れないの?
あなた
ッ、
…そっか、
どうすんの
んなの決まってるわ














俺たちのところ来る?





私の涙を拭いながらそう言う、

目の前に屈んでいる桃色の髪の毛の彼女。

冷え切っている私の体と同じように、

彼女の手は冷たくて。

けれど、どこか温かくも感じる、

そんな矛盾している彼女の手。















残った力を振り絞って、

私はその手を握った。








 










プリ小説オーディオドラマ