――こんにちは、✕✕さん。なんでここに?
記憶の中で、そう、誰かに問いかけた。
――特に、用事はないの。
そう言って、誰かは笑った。
――希愛ちゃんがいるのを、見かけたから。
その不気味な笑顔に、一歩身を引いた。
――強いて言うなら。
そうして、誰かが自分に手を伸ばし。
――――おまえを、ここから落とすため。
身体が宙に浮いて、グシャリ、と生々しい音がした。
一瞬だった。
◇◆◇
白い幕の向こうから聞こえる誰かの声で、希愛はゆっくりと、目を覚ました。白い天井は、教室のものではない。かといって、自宅でも、病院でもない。
あの騒がしい声は、紗葉と直樹のものだ。きっとそこにいるのだろう。――じゃあ、あとの二つは、一体誰だろうか?
なんて、ひょこりと顔を出す直樹を見て、希愛は首を縦に振る。続けて、紗葉がバッとカーテンを開けた。
相変わらずの快活な笑顔に元気をもらった希愛は、にっと不器用な笑みをつくる。それを見て、紗葉は思わず笑いだした。
てへぺろ、許してちょ、とかわいくおねだりする紗葉に免じて、仕方ないな、と呟いた希愛は「代わりに」、と聞く。
バァンッと紗葉が豪快にカーテンを開けば、そこには茶髪の人と、黄緑色の髪の人がいた。内容から察するに、どちらかがうりりんで、どちらかがシヴァなのだろう。
紗葉にそう促され、茶髪の人が手を挙げた。
うりがそう言えば、なにやってんだこいつと言わんばかりの態度で、翆は言い直した。
二人を見ながら苦笑する紗葉と直樹を横目に、希愛はひっそりと、壁の方を向いた。
こんなくだらないもので、クスリと笑ってしまったのは、自分だけの秘密だ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。