第12話

【12】私だけの
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2025/11/29 12:00 更新
 ――こんにちは、✕✕さん。なんでここに?

 記憶の中で、そう、誰かに問いかけた。

 ――特に、用事はないの。

 そう言って、誰かは笑った。

 ――希愛ちゃんがいるのを、見かけたから。

 その不気味な笑顔に、一歩身を引いた。

 ――強いて言うなら。

 そうして、誰かが自分に手を伸ばし。

 ――――おまえを、ここから落とすため。

 身体が宙に浮いて、グシャリ、と生々しい音がした。

 一瞬だった。

      ◇◆◇
青雛直樹
 蜂さんとかどうです? 
青雛直樹
 永遠の友になれますよ 
緋桐紗葉
 いや、怖がるって 
.
 じゃあ蛙か 
緋桐紗葉
 同類だよ!! 
.
 音楽? 
緋桐紗葉
 うるさい!! 却下!! 
.
 うるさいのはおまえだよ 

 白い幕の向こうから聞こえる誰かの声で、希愛はゆっくりと、目を覚ました。白い天井は、教室のものではない。かといって、自宅でも、病院でもない。
のあ
(……そっか)
のあ
(じゃぱぱさんが、保健室まで……)

 あの騒がしい声は、紗葉と直樹のものだ。きっとそこにいるのだろう。――じゃあ、あとの二つは、一体誰だろうか?
青雛直樹
 あ、おはようございます、希愛さん! 

 なんて、ひょこりと顔を出す直樹を見て、希愛は首を縦に振る。続けて、紗葉がバッとカーテンを開けた。
緋桐紗葉
 希愛さん起きた?! 
緋桐紗葉
 ……よかったぁ 
のあ
 は、はい……! 
のあ
 おかげさまで、もう大丈夫、です 

 相変わらずの快活な笑顔に元気をもらった希愛は、にっと不器用な笑みをつくる。それを見て、紗葉は思わず笑いだした。
緋桐紗葉
 なんか、希愛さんじゃないみたい! 
緋桐紗葉
 言っちゃ悪いけど、
 今のほうがかわいいと思う! 
のあ
 …………どの辺が? 
緋桐紗葉
 あやべ 

 てへぺろ、許してちょ、とかわいくおねだりする紗葉に免じて、仕方ないな、と呟いた希愛は「代わりに」、と聞く。
のあ
 あとのお二人は、一体? 
緋桐紗葉
 あぁ、うりりんとシヴァさん? 
緋桐紗葉
 うりりんとシヴァさんだよ 
のあ
 結局誰なんですか 

 バァンッと紗葉が豪快にカーテンを開けば、そこには茶髪の人と、黄緑色の髪の人がいた。内容から察するに、どちらかがうりりんで、どちらかがシヴァなのだろう。
緋桐紗葉
 ほら二人共! 希愛さんに、自己紹介! 

 紗葉にそう促され、茶髪の人が手を挙げた。
黒星うり
 エントリーナンバーワン! 黒星くろぼしうり! 
芝桜翆
 どぉもー、芝桜しばざくらみどりです 
黒星うり
 揃えろよ 

 うりがそう言えば、なにやってんだこいつと言わんばかりの態度で、翆は言い直した。
芝桜翆
 エントリーナンバーツー、芝桜翆 
黒星うり
 二人合わせてー? 
二人
 かぁらふるぅぴぃちでぇす 
緋桐紗葉
 ねぇ俺らこんな奴らの仲間なの? 
青雛直樹
 嫌だなぁ…… 

 二人を見ながら苦笑する紗葉と直樹を横目に、希愛はひっそりと、壁の方を向いた。
 こんなくだらないもので、クスリと笑ってしまったのは、自分だけの秘密だ。

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