前の話
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───春。桜が舞う、星翔(せいしょう)学園・入学式当日。
晴れ渡る空の下、全国から選ばれた”未来のスター”たちが校門をくぐっていく。
その中に、ひとりの青年──あなたもいた。
眩希は、自分でもなぜここにいるのかまだよく分かっていなかった。芸能に特別詳しいわけでも、歌やダンスが得意なわけでもない。
けれど「絶対向いてるって!」という友達の後押しに背中を押されて、彼はこの学園への入学を決めたのだった。
校内に進み、ロビーを歩く。
学園のロビー、壁に飾られているのは…歴代のMr.星翔(ミスターせいしょう)たちのパネル。
Mr.星翔 ───。
星翔学園のダンス、歌、演技、モデル、トーク、各分野のトップたち。
アイドルに疎いあなたの下の名前でも、見た事ある人達ばかりだ。
その煌びやかさに圧倒されていた時だった。
「うおっ!ごめんなさいすみませんっ!」
パネルを眺めてぼーっとしながらロビーを曲がった時に、人にぶつかってしまった。
相手は、同じ新入生だろうか。
お互いにペコペコしてすれ違う。
心の中でもう一度、その人の走っていく背中に謝る。
そして俺は、入学式が行われる大ホールに向かってまた歩き出した。
入学式がそろそろ始まる。
指定された椅子に座って、周りを何気なく見回す。
先生方はそれぞれの個性を爆発させたファッション。
そして先輩方も、俺と同じ新入生たちも、みんな個性が豊か。
同じ制服だからこそ、髪型やアクセサリー、雰囲気から滲む個性がとても映えていて、つい自分と比べてしまう。
周りに勧められたから何となく応募して、受かって、ここにいる。
そんな俺は、入学早々、埋もれる予感しかしなかった。
「──只今より、星翔学園・入学式を行います」
そんなアナウンスをバックに、俺は不安でいっぱいになりながら背筋を伸ばした。
学園長挨拶。
挨拶を促され、舞台に上がってきたのは…
金髪混じりの黒髪をオールバックできちっと固め、背筋がピシッと伸びた高身長の、所謂”イケおじ”と呼ばれるような男性。
「皆さん、ようこそ星翔学園へ。」
「私は本学の学園長、如月統一郎と申します。」
あまりにもかっこよすぎて、周りもザワつく。
「君たちのお父様やお母様が、まだ中高生だった頃に、アイドルグループの一員として、芸能活動を行っていました」
「ですから、名前だけは聞いたことあるよという方が多いかもしれません」
やっぱり、ここはやばい場所かもしれない。
入学式が無事に終わり、今はクラスを確認して教室に向かっているところ。
教室に入ると、やっぱり個性が凄かった。
空いている窓側の席に座り、窓に映る自分を見る。
そうやって自分の髪の毛をいじっていると…
「あれ!!君俺とぶつかった子じゃない??」
背後から声が響いた。
ぱっ、と手を差し出されて、反射的に握る。
すると、腕が取れそうなくらいブンブンと激しい握手を交わした。
亘は、俺の隣にどかっと座って嬉しそうにニカニカ笑う。
でもさっき塞ぎかけてた今の俺にとっては、とても心地良い空気だった。
そう思いながら、隣でバッグを漁っている亘を、何気なく頬杖をつきながら見ていると、亘が不意にこっちを向いて目が合う。
まさか、さっき落ち込んでた見た目で褒められるなんて思ってなくて、言葉を失う。
そう言って亘はケラケラ笑う。
いや、でも、確かに学生時代、俺はモテてきた方だった。サッカー部でキャプテンしてたし、成績もそこそこキープしてた。
周りが勧めてくれたのも「お前かっこいいし、スタイルいいからいけるって」っていう理由だったし。
亘は嬉しさを隠す様子もなくニマニマしながら
それでも周りを見て
それでも俺を見つめて、ふっと目を細めて
亘の、その眼差しに心が惹き込まれる。
真面目な話する時はそんな顔するんだ、なんて冷静な自分もいるけど。
亘は照れくさそうに笑って鼻の下をこする。
そんな時、ガラガラ…と引き戸が開かれた。
「…おし、全員いるな」
「入学おめでとう。今日から1年間みんなの担任としてアイドル活動をサポートする」
先生は、体すべてを使って黒板に大きく名前を書いた。
「真堂 彰だ」
「教師歴は5年。元はソロアイドルとして活動していたが、病気をして踊れなくなってな。今はこうして、母校であるここの教師をしている。」
「それでは今から、ここ、星翔学園について説明をする。君たちが3年間学ぶ場だ。しっかり聞いておくように」
真堂先生は、淡々とこの学園について話し始めた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。