上から降りかかる爆発を、間一髪で避ける。
同時に周りに舞った灰色に染まった煙を、月村が風で吹き飛ばし、視界を戻していく
なにも、なにも反応を示さないその男に、ぐちゃぐちゃになった感情が湧く。
どうして、頼ってくれなかったんだ?
コンタミの声は届かない。ただ、目の前にいるらっだぁを助けたい一心で、美しかった黄金色は赤黒く染まっていく
傷が痛む。血が滴る。意識が飛びそうなくらいに手が震える。
でも、ここで止まる訳にはいかない。
止めないと、らっだぁは、また_____
騒音の中で、透き通る声が聞こえた。
その声は届くことなく、自身の前を通り過ぎてらっだぁの方へと向かう。
視界の中で、3つの姿が重なる。
最も、そこに立つ彼女の後ろ姿は初めて会った時とは考えられない程に心強くて、それ以上に....
それ以上に、消えてしまいそうだった
直前、らっだぁさんの姿が目に映った。その様子は無情にもこちらに攻撃をしようとする姿で。
...それでも、怯む理由になりはしなかった。
手を大きく広げ、彼に触れる。
次にくる衝撃が痛みなのか、それともあの日の優しい声なのかは分からない。
だけどね、らっだぁさん
これだけは、嘘でも偽りでもない。
だから、このことだけは伝えさせてください。
誰かの笑い声、軽蔑する声がまた聞こえてくる。
こんなにも静かなのに、こんなにも真っ暗で、何もないのに。
額に手を当て、自身の精神の壊れ具合を実感する。
....いや、本当は1番気づいていたんだと思う。
ただ目を向けてやるほどの時間はなかったし、結局誰にも気付かれなかったし。
これで、全てが終わった。
自己満足にしかならないことは分かってる。
でも、俺にはこの最期がお似合いなんだとずっと思っていた。
いつも大切な人を守れなくて、相手の思うままにされて、気付いた時には全てが手遅れで。
みんな、俺のしたことを責めるだろうなぁ。
総統に仕えていた上位能力者がこんな最期を迎えたんじゃ、国民からも皆からも失望される。
....
だから、
最期ぐらい思い出に浸りたい。
きょーさんはいつもうるさかったなぁ。毎回暴言吐きまくって。それなのに人一倍努力して、使うはずのなかった能力と向き合って戦って。ほんと、そういう所は尊敬するけどさ。
みどりはいっつも嫌味ったらしい言葉使って周りに突っかかってたっけ?いや、それはあなたの下の名前が来る前だったかな。でも、なんだかんだ相手を思いやる気持ちはちゃんとあって...あ、こんなの言ったらおじさん臭いって言われるかなぁ。
レウさんにはいつもお世話になっちゃったなぁ。怪我する度に怒られて、長い説教聞かないためにも適当にあしらってたな。....あー、でも、もっとちゃんと聞いておけばよかったなぁ。もう、無理だけど
コンちゃんは、俺の代わりに総統の右腕として頑張ってくれてたし、誰よりも責任感もあった。...いや、N国での月村騒動は許してないけど。....でも、本当に誰よりも国を守ろうとしてたの俺は知ってるからね。
ぺいんと....特に何も浮かばねーなぁ。なんでだよってあいつは怒ると思うけれど、でも俺たちの仲だし、このぐらいでいいよな。.....このぐらいの方が、更に辛くなることはないだろうから
しにがみは俺と一緒に怒られてた記憶ばっかりだった気がする。長くいて喧嘩の記憶とか、溜息しか出ないわ....。....今の俺の状態を見たら、またアイツは怒るのかな。
クロノアさんにもお世話になって、よく助けて貰ってた。あの人、ほんと完璧超人だし強いんだから、欠点がない人って凄いわ。ほんと。
....本当に、その後ろ姿が遠いと感じるくらいに
トラゾーさんは毎回ぺいんととの仲裁に入ってくれたり、よく脳筋だとか言われてたけど、クロノアさん同様に冷静に状況を判断してくれてた。...俺も人をちゃんと守れるぐらい強くなりたかったな
ぴくとはいっつも、元気で素直に聞く良い奴だったな。その素直さが時折危うさを招いてたけど、頑張っていけば上位能力者にはなれそうだなぁ...こういうこと、本人の前でなら喜んでくれたかな
月村は....あー、今考えると無茶苦茶な加入の仕方だったっけ。アイツもアイツで嫌味ったらしい口調で煽ったりしてたしいつも余裕ぶってたな。...アイツも大人に無理やりさせられた、被害者なのに
....あなたの下の名前。
ずっと、ずっと逃げ続けて、傷付けたくなかった。
優しくて、微笑む姿が好きで、誰にも奪われたくなかった。...最愛の人の名前。
掠れた声だけが響いた。
境界線の見えない真っ黒な世界で、顔を上げて、呟いた。
声が跳ね返って来ることも、反応も、なにもない。
その様子に不自然にも笑いが込み上げてきた。
........
「静かな場所も好きですけど....」
「私は皆と居る方が大好きです」
「...そこに、貴方も居て欲しいと思うのは...私の我儘かもしれません」
「それでも、....」
「私は、貴方に生きていて欲しいと思ってしまったから」
冷たかった指先がじんわりと熱を帯びていく感覚に意識が浮上した。
心地良くて、昔、母抱きしめられながら寝ていた記憶が蘇る。
目を開けた。
指先を見つめた。
"誰かが"俺の手を握っていた。
呟くと、その相手の手に力が篭もる。
優しい手つきだというのに、その手は俺を離そうとする気は微塵たりともなかった。
その声と瞳は、ただ真っ直ぐとこちらを見ていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!