第15話

貴方の本音
29
2025/09/24 15:44 更新
私は、その静寂なるドールの後ろに着いて行った。

三年前.....

全ての五感に轟いてきた音がある。

暗い闇の中、一つだけ幻想を抱いていたものがある。
それはもう一つの最高の場所"世界"だった。

パソコンを初めて母が買ってくれて、開いた途端に景色は変わった。ただの闇の自分の部屋が、たった一瞬光に満ちた。
こんなにも....こんなにも楽しい世界があるんだと、ただのネットの画面の虜になって、無我夢中にのめり込んだ。

キーボードの音さえも、マウスをクリックする感覚も、youtubeを見ている時の興奮も、全部全部楽しかった。
それと同時に理解した。
この現実が、私には不相応なんだってこと。
君なら分かるはずだ。小説を読んでいる時時、私は心が踊っている。少しだけ書いてみて、それまた楽しかった。
それと同じことだった。
その画面の中には、新しい世界が広がっていて、自分と同じ人間も沢山いる。

特に理由も無いけれど、私は現実が嫌だった。
少しの視線も、少しの会話も、少しの人との繋がりも。
私は思わず天を仰いだ。


フルール
...ww

ゲームの世界だった。
バトロワゲーム。敵を倒したキル数での単純なゲームだった。
それでも、一つ一つの試合は違って、どんどん高みを目指していくようになっていた。

でも、たった一つの試合だけ、私は胸が痛かった。
味方は初心者、時に足手まといになっていたけれど、必死に味方を守る姿勢とか、努力とか、そういうのを感じた人がいたことだ。
名前は「ホルト」
由来は「ホルトノキ」から来ているそうだ。

試合が終わってからのチャットで、私は初めて"世界"でのお友達が出来たのだ。
ホルト
フルール。俺に戦い方を教えてくれないか?
フルール
....良いけど、眠くないの?
もう4時だよ。

朝方まで必死になった。
次の日は土曜日で、金曜の夜私はいつも徹夜していた。
だから、ホルトの体の方が心配になった。
私基準じゃ無いって事、それくらい、分かっていたから。
ホルト
問題無いさ。
全然眠くないからね。
フルール
分かった。
フルール
まず武器はね..........!!

そこから時は早かった。
ホルトはどんどん上手くなって、私と同じくらいのレベルにまで到達していた。
たった三日だけなのに。
フルール
凄いね!!もう私と同じだよ..!?
フルール
その素材私も使おうかな〜、
ホルト
...ww

今思えば、ホルトの笑うタイミングと、ドールの微笑むタイミングは、少し似ていたような気がする。
フルール
なんで笑うの?
ホルト
フルールが楽しそうに話すのは、
ゲームの話の時だけだなって思ってね。

もっとホルトに関心を向けろ、そう言われたのかもしれないが、ホルトが今言ったその言葉は、紛れもない事実だった。
フルール
だって、楽しいから。
フルール
人と話せば話すほど、私は辛いの。
そういうの、もう疲れた。
フルール
でも、世界は違う!
一つの目標に皆が必死に生きてるから!!
ホルト
ほんとだ。
フルール
....www
フルール
すっごく面白いじゃん!
ホルト
....ww

ホルトに何か起こった分かると前日、いつものように世界に生きてた。
今度は、本の世界。皮肉にも、書いたその全ては人間だけど、本の世界に罪など無かった。
フルール
この小説面白いよ。
フルール
泣ける泣ける。
ホルト
そうかな?じゃあ読んでみるよ。
フルール
......
そういえばさ、ホルトの名前の由来って何なの?
ホルト
ん?俺の名前?
フルール
そう。
「ホルト」なんて、あまり聞かないし。

画面越しにでも分かっていた。
ホルトは少し悲しんだ。遠くを見つめるような、そんな微笑みと共に。
ホルト
....そうだなぁ
ホルト
一人だけ...
少女のファンタジー物語から来てるんだけど....
ホルト
気になる?
フルール
気になるな〜、
ホルト
それじゃあ語ってあげよう。フルールくん。

あまり、覚えていない。
次の日に、ホルトと会えなくなるなんて、思ってもみなかったから。
また明日と明後日と、世界で顔を合わして笑って、一緒に楽しんでいくもんだと思ったから。

フレンドから消えてしまって、この会話も無くなった。
全ては私の記憶だけだった。

....あの時ホルトは、なんの話をしたんだっけ。

霧がかかったように見えなくて。
楽しい思い出しか、頭に無くて。
いつしか、ホルトと出会い、ドールを信じて、アメアを知った。
その全て、どれも美しい人だった。
....私も、前を向く時なのかもしれない。
人間と関わらないで生きていく、無理な話だ。
この生涯、ドールに全てを捧げるのもありかもしれない。

だから、もう少しだけ、待って欲しい。
あと少しだけ。
全てを救う方法と、全てを欺く方法を。
ドール
この場所に、ホルトの声がある。
美華
....ッ!?

不意をつかれるように穴が空いた。

その場所は、その部屋は、ホルトの好きだったゲームとか、映画のCDとか、パソコンの機種とか、他にも沢山。
僅かな雲が流れるように、その部屋の時間は動いていた。

口を開いた。
この事実を、ドールに確認しないといけない。
私は、その眼をドールに向けていた。
ドール
......ww

酷く濁った笑みだった。
ドールは全てを知っている。理解している。

だから、私に紡ぐその言葉は、私にとっての事実確認だ。
ドール
何も聞くな.....フルール。
ドール
...何も...。


......ッ。

顔には何も出さなかった。
いや、出せなかった。

目の前にいる存在は、私以上の人だって。
私なんかでは、辿り着かないんだって。
ドールの微笑みを感じる度に、私は、一生その後悔に苛まれるのだろう。

それでも。優しすぎていた。

その部屋に一歩踏み出していた。
そこからもう止まらなくて....

リアルでも会ったことは無いし、通話だって一二回しただけだった。
それでも、ホルトが生きてた意思がある。
私のあの記憶も、あのチャットも、あの声も、ホルトはちゃんと生きていた。
その事は....せめて...その事だけでも、、
私は永遠に覚えていたい。

現実から背き続ける、私だけの物語。

一つの封筒、それだけが私の瞳に飛び込んできた。
震える瞳に、しっかりと。



扉の傍に、立っていた。
静かに、厳かに、華々しく、立っている人物がいたのだった。
ドール
あとは頼んだよ。
アメア
......
ドール
玄関に五六人、そして、ここに来るまでの道のりで、
防犯カメラに映った姿は数え切れなかった。
ドール
私はそっちの対処に向かう。

真剣なる眼差しで、はたまた余裕そうな笑みを浮かべてその人は言った。
ドール
....まぁ、捌ききれないと思うけどね。
アメア
承知致しました。ドール様。

噛み締めながら、胸を手に当てていた。
ドール
....ww
ドール
死ぬの、怖い?

その言葉に、アメアはこれまで以上に驚いた。
でも、その全て、決意していたことがあったから。
アメア
ドール様がいれば、怖くないです
アメア
....(笑)
ドール
......ww
ドール
大丈夫。守ってあげるから。
アメア
私はどこまでも着いて行きますよ...?
ドール
あはは。
それは困るなぁ....ほんと。
ドール
アメアと出会えて、良かったよ。
アメア
....ww
アメア
俺も。
ドール
それじゃあ、また会おう。




ドール
来世でね。












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